2010年10月20日(水) 00:00
近代競馬の先進国イギリスには、人生と競馬の接点になる言葉が残されている。そんな中で、ローズベリー卿の「競馬は人と人を結ぶカスガイだ」という言葉は、ずっとこの体に生き続けてきた。卿はさらに「街角でも電車の中でも喫茶店でも、見知らぬ者同志が競馬を話題にすることで心を開き、親しい友だち同然となる」とも言っている。
競馬の本家イギリスの競馬人らしい言葉ではないか。
競馬が日常生活の中に自然にとけ込み、「スポーツ」として「ベッティング」として人々に親しまれている国ならではの言葉だが、かつてラジオの特番でこんな話をしたことがあった。ハイセイコーが中央競馬に登場し空前のブームに沸き立っていた頃で、売り上げは増加し、競馬人口も年々増加していた。
その折、このブームを手放しで喜んでばかりはいられない。これは本当に競馬ブームなのか、それとも馬券ブームなのか、じっくり考える必要があると思っていた。
イギリスのように「競馬が人と人を結ぶカスガイ」の役割を果たしているかどうかは別としても、短絡に「競馬はギャンブルである」とか「ロマンである」とか、一方的に決めつけるのは避けなければならないのではないか、そう確信はしていた。
「あなたにとって競馬とは」を問うことによって、競馬とそれを楽しむ人々との関係を浮き彫りにする、このテーマは、今でも生きている。
競馬ファンの中には、ギャンブル面だけを楽しんでいる人もあれば、スポーツとしてのロマンを満喫している人もあるわけで、その楽しみ方は、その人のオリジナリティによって決まる。「あなたにとって競馬とは」を問うことで、競馬と人生の接点を探ってみたい、今はこんな時期にあるように思えてならないのだ。競馬文化論の方向性をしっかり踏まえて、これからの競馬とつき合っていきたい。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。