2010年10月26日(火) 00:00
シリーズでお届けしているブリーダーズC展望。今週は、今年のBCの中でも屈指の好カードと言われるマイル(11月6日、チャーチルダウンズ)の有力馬を御紹介しよう。
各社ブックメーカーが、2倍から2.5倍のオッズで1番人気に推しているのが、ここが現役最後の一戦となるフランスの名牝ゴールディコーヴァ(牝5、父アナバー)である。
5歳を迎えた今季は、ここまで5戦を消化し、トラックレコードで制した初戦のG1イスパーン賞を皮切りにG1・4勝。唯一の敗戦となった8月のG1ジャックルマロワ賞(ドーヴィル)は、得意とは言えぬ道悪にたたられた上に、フランス3歳最強マイラーのマクフィーにマックスの力を発揮されたもので、致し方のない敗戦であった。直前走となった10月3日のG1フォレ賞(ロンシャン、1400m)も酷い道悪となり、回避も取り沙汰されたが、危なげのない競馬で11度目のG1制覇を達成。既にして競馬史に残る実績を残している同馬が、史上初のBC3連覇を達成して引退の花道を飾れるかどうかは、今年のBCにおける大きな話題の1つとなっている。
6倍から7倍のオッズで2番人気に推されているのが、この路線のG1・3勝というイギリスの古豪パコボーイ(牡5、父デザートスタイル)だ。
ゴールディコーヴァが今季制した4つのG1のうち、6月のG1クイーンアンS(ロイヤルアスコット)と10月のG1フォレ賞(ロンシャン)で2着に食い込んでいる同馬。しかも着差は、クイーンアンの時が首差、フォレ賞の時が半馬身差と、孤高の女王に肉薄するものだった。馬群後方から末脚を爆発させるタイプだけに、アメリカの小回り馬場が合っているとは思えぬが、能力的に2番手の評価は妥当と言えよう。
そのパコボーイと、ほぼ同等の評価(オッズ7倍から8倍)を受けているのが、地元アメリカのジオポンティ(牡5、父テイルオブザキャット)である。
御存知、昨年の北米ターフチャンピオンで、ブリーダーズCではオールウェザーのG1BCクラシックに出てゼニヤッタの2着に健闘した馬である。今年の春はドバイに遠征し、メイダンのオールウェザーを舞台としたG1ドバイワールドCで4着となった後、アメリカに戻って芝のG1を4戦。2勝、2着2回と、相変わらず安定した競馬を続けている。ブリーダーズCにおいては、基本的に12Fの距離は長いため「ターフ」は眼中になく、「マイル」と、今年はダート10Fが舞台となる「クラシック」のクロスエントリーを行う予定だ。直前走に選んだのは、10月9日にキーンランドで行なわれたG1シャドウェル・ターフマイル(芝8F)で、ここをあっさりと快勝して自身6度目のG1制覇を達成。現状では「マイル」に廻る公算大と言われている。
ジオポンティ同様、ブリーダーズCの一次登録の段階ではクロスエントリーを行う予定なのが、プロヴァイゾー(牝5、父ダンシリ)だ。
牡馬を撃破した3月のG1フランクキルローマイル(芝8F、サンタアニタ)を皮切りに、芝8F〜9FのG1を4連勝中の同馬。昨年のブリーダーズCではオールウェザー9FのG1レディーズクラシックに出走して4着だったが、今年の同レースはダート9Fが舞台となるため選択肢にはなく、「マイル」か、牝馬限定の「フィリー&メアターフ」の二者択一となっている。フランス在籍時代には、2000mのG1サンタラリ賞3着、2100mのG1仏オークス4着の実績もあるため、アメリカの馬場であればフィリー&メアターフの芝11Fもこなせるであろうとの見方もあるが、陣営はマイル出走に傾いていると伝えられている。こちらに廻れば、オッズ9倍から11倍の4番手評価だ。
これに続くのが、8月15日にデルマーで行なわれた芝8.5FのG2ラホイヤHをトラックレコードで制して、一躍この戦線の風雲児となったシドニーズキャンディー(牡3、父キャンディーズライド)である。
今年春には、G2サンヴィセンテS、G2サンフェリペS、G1サンタアニタダービーと3連勝し、西海岸を代表する1頭としてG1ケンタッキーダービーに駒を進めた同馬。そのケンタッキーダービーは、20頭立ての20番枠という不運に泣いたのに加え、初ダートが極悪の不良になって全く力を発揮出来ずに大敗。その後地元に帰り、オールウェザーのG2スワップスSで2着になった後、初めて芝のレースに挑んだのがラホイヤHで、ここで見せつけたスピードはまさに圧巻のひと言であった。BCへのプレップとして、10月9日にハリウッドパークで行なわれたG2オークツリーマイルを使う予定だったのが、「所有権譲渡の交渉が進行中」との理由で直前回避したのが気懸かりだが、BCを目指しての調教は休まず続けられている。出てくれば、オッズ11倍から13倍の評価となっている。
ゴールディコーヴァという確たる軸がいる上に、その牙城を崩そうという顔触れにも役者が揃っており、非常に楽しみな一戦になりそうである。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。