ミッドナイト競馬はトクなのかどうか

2010年10月30日(土) 00:00 0

 28日、JKA(競輪とオートレースの振興法人)が、来年1月から小倉で“ミッドナイト競輪”を実施することを発表しました。

 スポーツ報知によると、「1日7レース、7車立てで争われ、第1レースの発走時間は通常ナイター終了後の21時、最終レースは23時ごろの予定」とのこと。「無観客レースで、インターネット投票だけで車券発売を行う」そうです。「深夜、無観客にすることで近隣対策も問題なく、警備などの人件費も大幅にカットでき、運営経費は昼間開催に比べ大幅に軽減できる」とも書かれていました。

 数年前に、高知競馬がナイターを開催するにあたって、深夜の無観客レースの実施を視野に入れている、という噂を聞いたことがあります。噂が本当だったとすれば、競輪に先を越されてしまいましたね。

 それじゃぁ、高知にとって“ミッドナイト競馬”はトクなのかどうか。私なりに考えてみました。

 今年4~9月期の地方競馬開催成績によると、高知競馬の馬券発売総額のうち、場外での発売額が占める割合は約82%に達しています。ただし、電話(インターネットを含む)投票の発売額は全体の約60%。言い換えれば、場内と他場・場外発売所での発売額が約40%もあるわけです。深夜の無観客レースを実施して、馬券をインターネット限定の発売にすると、この分がなくなってしまうことを覚悟しなければなりません。

 他の競馬が終わった後の深夜にレースを実施すれば、おそらくインターネット投票による発売額は増えるはず。先の記事にもあるように、本場の経費削減効果も期待できます。そのあたりは、もっと専門的な試算が必要でしょう。それでも、果たして採算ラインに届くかどうかは微妙という気がしますね。

 大ざっぱに言えば、今やっている競馬を“ミッドナイト競馬”に移行するより、競走馬を有効活用できる範囲で開催日を増やし、その分を“ミッドナイト競馬”にすれば、いくらかの増収につながるのではないか、と思われます。

 とはいえ、もうすでに高知競馬は毎週土・日曜日(または金・土曜日)の開催を組んでいますから、それ以上に開催日数を増やすのはなかなか難しいでしょう。

 さらに言えば、私のような地方競馬巡りを趣味にしている人間にとって、高知競馬が無観客の“ミッドナイト競馬”になっちゃったら大問題。廃止同然の事態になるわけですからね。

 なのでひとまず、高知での“ミッドナイト競馬”の実施はトクなことではない、としておきましょう。それをやるくらいなら、海外競馬の馬券を地方競馬のインターネット投票システムで売って、その売上を収益とする方策を考えたほうが、よっぽどマシだと思います。世界が相手なら、“オールナイト”で売れるわけですからね!では、また来週。

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矢野吉彦

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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