2010年11月06日(土) 00:00 0
2日に行われたメルボルンカップ(フレミントン競馬場、芝3200m)。オーストラリアでは、“The race that stops a nation=一国(の動き)を止めるレース”と言われるほどの国民的行事で、今年は節目の150回目を迎えました。
日本から遠征したトウカイトリックが12着に大敗したせいか、こちらのスポーツ新聞などでは詳しく報道されませんでしたが、今回はなかなかおもしろいメンバーが顔を合わせ、その結末もけっこう劇的なものになったんです。
1番人気に推されたのはソーユーシンク(単勝3倍)。これまでのメルボルンCで12勝を挙げている名伯楽、バート・カミングス師の管理馬で、8月28日のメムジーS・G2、9月18日のアンダーウッドS・G1に続き、10月9日のヤルンバS・G1、同23日のコックスプレート・G1、同30日のマッキノンS・G1を勝って今季5戦5勝。今回のレースには、1930年のファーラップ(日本の馬に例えれば、ハイセイコーとオグリキャップをかけ合わせたような伝説のスターホース)、54年のライジングサン(こちらも殿堂入りしている名馬)以来となる、コックスプレート+マッキノンS(1930年当時はメルボルンS)+メルボルンC制覇がかかっていました。
2番人気はマラッキーデー。マッキノンSと同じ先月30日に行われたレクサスS・G3を勝って重賞初制覇を果たしたばかりの馬です。とはいえ、ソーユーシンクより5kg軽い51.0kgの斤量と、去年のメルボルンC優勝馬ショッキングもレクサスSの勝ち馬だったところから人気を集めたようです。
3番~5番人気は混戦。連覇を目指すショッキング、フランスからの遠征馬でメルボルンCの前哨戦の1つとなっている先月23日のジロングC・G3を制したアメリケイン、トウカイトリックもステップに選んだ先月16日のコーフィールドC・G1に勝ったデスカラードが単勝11~15倍で並んでいました。
23頭立てで争われたレースは、ゴールまで300mほどの地点で馬場の真ん中から本命のソーユーシンクが抜け出し、「歴史的快挙達成か」と思わせます。しかしそこに、外からアメリケインが強襲、アッと言う間に先頭に立つとそのままゴールイン。ソーユーシンクは、すぐ内から伸びてきたマラッキーデーにも交わされて3着に敗れました。連覇を狙ったショッキングは18着に惨敗、デスカラードは競走を中止してしまいました。
ヨーロッパからの遠征馬の優勝は、93年のヴィンテージクロップ、02年のメディアパズル以来3頭目。8月にドーヴィルのG2戦を勝った後、早めにオーストラリアに渡り、前哨戦を制して弾みをつけていたことと、雨が降って重たい馬場になったことも勝因と言えるでしょう。
以上、今回はメルボルンCの結果をお伝えしました、では、また来週。
矢野吉彦
テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。