「第2回ジョッキーベイビーズ」その2

2010年11月17日(水) 00:00

 今回は11月7日当日の模様について書く。

 朝8時。東京競馬場の乗馬センターに8人の出場騎手と関係者が集まった。やや曇り勝ちながらまずまずの好天で、雨の心配はなさそうだ。

 前日と同じく、まず全員が集合しての打ち合わせから始まった。騎乗馬の名前の入ったゼッケンが配られる。いよいよ本番当日だ。それぞれ勝負服に着替え、前日と同じく、コンビを組むポニーたちに騎乗しての練習が始まった。

 前日とは比較にならないほど多くの報道陣がきている。テレビカメラも数台回っている。

1.福久紗蘭さん(北海道・小5・騎乗馬ユキノヒビキ[せん5歳])

(写真・福久さん)

2.根本ひなたさん(北海道・小6・騎乗馬ドリームスター[せん4歳])

(写真・根本さん)

3.渡邉亮介くん(関東・中1・騎乗馬グッピー[牝14歳])

(写真・渡邉さん)

4.川島はるかさん(関東・中1・騎乗馬コリス[牝12歳])

(写真・川島さん)

5.木下幹太くん(長野・中1・騎乗馬オオタニハヤテ[せん3歳])

(写真・木下くん)

6.荒井花純さん(関西・小5・騎乗馬レインボー[せん7歳])

(写真・荒井さん)

7.長田彩椰さん(関西・中1・騎乗馬ブッチー[せん9歳])

(写真・長田さん)

8.福元大輔くん(南九州・中1・騎乗馬レモン[牝14歳])

(写真・福元さん)

 8頭のポニーを改めて比べてみると、微妙に体格差がある。また、くじ引きによって組み合わせが決定したものの、比較的小柄なポニーにやや大柄な騎乗者が乗ることになったり、そこそこ大きなポニーを小柄な騎乗者が引き当てたりして、上下のバランスが取れていない(ように見える)コンビもあった。

 入念な準備運動が繰り返される。

 会場には柴田政人調教師も顔を見せ熱心に練習風景を見守る。柴田師は「最優秀騎乗技術者審査委員」として来場した。岡部幸雄さんの代役だという。

 レースを前にして緊張が走る。

 ターファイトクラブの勝負服に身を包んだ1番福久紗蘭さんは「本物の騎手になったみたいな気分です」と言った。2番根本ひなたさんは「馬がちょっと元気ないかも」と心配しながらも「北海道代表としてがんばりたい」とコメントした。

 3番渡邉亮介くんは船橋所属の川島正太郎騎手の勝負服。「緊張しています。出遅れないようにしたいです。がんばって1着を狙います」。

 同じく関東代表の川島はるかさんは、オグリキャップの勝負服で騎乗だ。「これは、娘が初めて草競馬に出た時に騎乗したチャオというポニーの馬主から拝借したものです」と父である利一郎さんが教えてくれた。

「瀬戸口厩舎の名前が襟に入っていて本物なんですよ」と付け加えた。

 5番木下幹太くんは前日の練習後、本番で秘策ありと語っていたものの、当日の朝はやや控えめなコメントになった。「緊張しています。4着以内には入りたいけど…」と慎重発言であった。

 木下くんと同じデザインの勝負服を着た6番の荒井花純さんは「楽しみです。優勝してカップをもらいたいです」と自信の発言。なおこの2人は同じ乗馬クラブに所属しており(愛知県・ARC空港乗馬クラブ)、赤と黒の縞模様はクラブのテーマカラーから作ったものだという。

 7番長田彩椰さんは白鳥をあしらった勝負服で騎乗。地元関西のテレビ局から取材に訪れたレポーターから応援の色紙を手渡され激励される一幕もあった。「絶対に優勝します。がんばります」と力強くコメントした。

 8番福元大輔くんは、TCK所属の真島大輔騎手の勝負服。「緊張はしていません。ワクワクしています。こんなチャンスもらったからには悔いの残らないよう精一杯やりたい」と語った。

 本番は第4レースが終わった直後である。11時になり、応援の保護者や関係者が集合して乗馬センターから移動を始めた。大半の人々はウイナーズサークルに向かう。

 第4レースの口取りが済み、場内に実況アナの声が響く。大型ビジョンにジョッキーベイビーズの文字が映し出される。いよいよ出走だ。

 昨年の優勝騎手である木村拓己くん(北海道)がスターターを務める。GIファンファーレが鳴り響く。カウントダウンがビジョンに現れ、5、4、3、2、1と数字が変わる。0でいよいよスタートを切った。

 内側を進んだ1番福久さんと4番川島さんがレースを引っ張り、この2頭の外側から残りわずかで3番渡邉亮介くんが一気に迫る。ゴール前で渡邉くんが福久さんと川島さんを交わし1着となった。

 渡邉くんはレース前、「ガッツポーズを決めたい」と言っていたがきわどい勝負となったため「勝てたかどうか分からなかった」ことからガッツポーズは見せなかった。

 2着は川島さん、3着福久さん。

 後はかなり差が開いた。想定外とも思える着差がついたあたりにこのポニーレースの難しさがある。結果論から言えば、渡邉くんと川島さんは、それぞれ関東地区予選の時に騎乗したポニーを前日の抽選の際に引き当てた幸運が、そのまま本番での着順となった形だ。

 一部の保護者からは、予想外にポニーの能力差があったことに対する不満が出ていたのも事実で、今後は「いかに能力の揃ったポニーを用意できるか」という難題も浮上してくるが、あるJRA関係者は「厳密に能力差のない8頭を揃えるのは今は無理」と断言する。それには20頭からの体格の似たポニーを用意し毎週追い切って競走用に訓練しておくほどの準備が必要だから、という。果たしてそこまでやれるのかどうか、を考えたら現実問題として不可能だ、というのである。

 まだ2回目が終わったばかりだが、この他にも様々な「想定外の」問題点が噴出してきた。全国各地の乗馬に勤しむ少年少女の憧れの舞台としてジョッキーベイビーズはある。来年以降もぜひ続けて欲しい企画で、そのためのより厳密なルール整備が急がれる。

 なお、優勝した渡邉亮介くんは騎手志望だという。目標は三浦皇成騎手だとか。「まだ夢を見ているようです」とレース後、笑みを浮かべながら語っていた。

(写真・レース後の渡邉くん)

 レースである以上、どうしても着順がついてしまう。しかし、今年の8人は昨年と比較すると騎乗技術に関しては格段にレベルが揃っていたことを付記しておく。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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