2010年11月25日(木) 00:00
かつて、と言っても大昔のこと。いくらレースに登録しても、一緒に走らせたくない馬主ばかりで、実に17回もレースに出られなかった馬がいた。その馬があまりに強いためそのようなことになったのだった。
その馬の名は、エクリプス。18戦して不敗を誇った18世紀のスーパースターだ。この栗毛が産まれた1764年の日食に因んでこう名づけられたのだが、今のサラブレッドのサイアーラインを辿っていくと、その多くはこの名馬に行き着く。エクリプス系、あまりにも遠い昔のことといっても、血統の世界を覗いてみればそんなに古びた話ではない。
その存在がどれだけ偉大であったかは、24歳で亡くなったエクリプスの骨が、ずっと保存され、その驚異的なスピードの理由を見出そうと研究し続けられてきたことでも伺い知れる。そして、今もニューマーケットの国立競馬博物館で見ることができるのだ。
何故、いまエクリプスなのか。それは競馬を文化として、或いは歴史的な側面から見る伝統がずっと息づいて存在しているという事実が素晴らしいと思うからなのだ。
エクリプスのエピソードに以下のようなものが伝えられている。
6歳で引退し種牡馬になったとき、エクリプスはエプソム付近で繋養された。ところが近くにエクリプスがいるということで、エプソムダウンズに人が多く集まり、レースが盛況を極めたというのである。
競馬の世界にこんなエピソードが存在したことを知り、競馬を伝える側の人間として、大いに反省させられた。何をどう伝えてきたのかという思いを、少しでも取り戻さねばならないと痛感する。
ところでエクリプス研究の成果の中に、走る馬の心臓は強く大きいというものがある。
その重さが、普通の馬は4.7kgぐらいなのに、エクリプスの心臓の重さは6.4kgもあったという。現代の名馬はどれくらいか。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。