言葉

2010年12月01日(水) 00:00

 優しい言葉、いたわりの言葉、励ます言葉、ほめ言葉、どんどん周囲の人に施していきたい。その一言が、どれほど大きな力となるか、これまで度々経験してきた。

 ちょっと気まずいこと、ちょっと辛いことが起きたら、こうした言葉を駆使し、どれだけその場の雰囲気を変えようとしてきたことか。これが自分の役割とずっと思ってやってきたので、先日のジャパンカップでも大いに気をもんだ。

 降着したブエナビスタの陣営のみならず、その勝利を確信していたファンには非情なシーンとなってしまった。どんな激しい言葉が発せられても仕方がない。一方、繰り上がったローズキングダム陣営には、それを幸運とばかり言えない思いがあっただろう。勝つならもっとすっきり勝ちたかった、幸運とばかり言わないでほしいと。あれがなかったらという思いは、当然あって不思議でない。

 いずれのサイドに立つかで、その言い方や考え方も異なるというのが勝負の世界だ。伝える側は、どちらか一方の立場に立ってはいけない。あくまでも客観的であらねばならないから、難しい。

 ここで登場しなければならないのが、いたわりの言葉であり、励ましの言葉なのだ。

 ジャパンカップは、日本で一番勝ちたいレースと公言していた騎手には、いつにない力がみてとれていた。スタートが近づくにつれ、それが、こんなに強い馬に乗るのだから期待は大きいのは当然となっていた。

 直線に向いて脚を伸ばしてきたとき、その思いは、馬上での激しいアクションに変じたと考えられる。その思いは、実によくわかるのだ。一方、幸運と見られるローズキングダム陣営には、一瞬ひるんだダメージをはね返し、最後までしっかり戦った人馬をほめてあげたい。そうでなかったら、自分の勝利はなかったのだから。競馬が好きならば、そうした感性を持ち続けようではないか。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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