2011年度生産者賞交付基準

2010年12月15日(水) 00:00

 馬券売り上げの下落に歯止めのかからぬ状態が続いている。JRAの場合、今年1月から10月末までの241日間で、1兆9984億9917万6200円。前年比で94.7%の水準だという。

 入場人員は540万803人。こちらは同じく前年比で93.6%に止まっており、さらに厳しい。

 一方の地方競馬は、2869億6018万8000円。前年と比較するとこちらも94.3%と苦戦しており、入場人員に至っては、335万9257人と、90.4%まで落ち込んでいる。

 こうした状況から、JRAも競走事業費全体を減額せざるを得ず、生産者賞関連の各項目にもその影響が及んできている。来年度における交付金額は次の通りである。

1.生産牧場賞
(1)一般競走
 1着30万円、2着12万円、3着8万円
(2)重賞以外の特別競走
 1着45万円、2着18万円、3着11万円、4着7万円、5着5万円
(3)重賞競走
 1着70万円、2着28万円、3着18万円、4着11万円、5着7万円
(4)GI競走
 1着80万円、2着32万円、3着20万円、4着12万円、5着8万円
(5)天皇賞(春・秋)、ダービー、宝塚記念、JC、有馬記念
1着150万円、2着60万円、3着38万円、4着23万円、5着15万円

2.繁殖牝馬所有者賞
(1)新馬、未勝利競走
 1着30万円、2着12万円、3着8万円
(2)1勝以上の競走
 1着30万円、2着12万円、3着8万円
(3)重賞以外の特別競走
 1着45万円、2着18万円、3着11万円、4着7万円、5着5万円
(4)重賞競走
 1着100万円、2着40万円、3着25万円、4着15万円、5着10万円
(5)GI競走
 1着150万円、2着60万円、3着38万円、4着23万円、5着15万円
(6)天皇賞(春・秋)、ダービー、宝塚記念、JC、有馬記念
 1着200万円、2着80万円、3着50万円、4着30万円、5着20万円

 これらのうち、今年から来年にかけて減額されたのは1.生産牧場賞の(6)天皇賞(春・秋)、ダービー、宝塚記念、JC、有馬記念が1着200万円→150万円となったこと、2.繁殖牝馬所有者賞の(2)1勝以上の競走が1着35万円→30万円に(4)重賞競走が1着150万円→100万円に(5)GI競走が1着200万円→150万円に(6)天皇賞(春・秋)、ダービー、宝塚記念、JC、有馬記念が1着250万円→200万円に、それぞれ削減された点である。もちろん、1着のみの減額ではなく、2着以下もまたその削減幅に応じて減額されていることは言うまでもない。

 厳しい台所を反映してか、生産牧場賞と比較すると交付金額の大きかった繁殖牝馬所有者賞がターゲットになり、とりわけ重賞競走に対する見直しがより進んだ。

 生産牧場賞は、国内で施設を有し生産に従事していれば交付対象となる報奨金である。

 また、繁殖牝馬所有者賞は、当該馬が誕生した時、繁殖牝馬を有していた生産者もしくは中央競馬に登録のある馬主が対象である。

 冒頭で触れたように、JRAの馬券売り上げが年々下落し続けている状況では、こうした部分も削減の手が及ぶ。生産牧場賞においては、GI6競走のみに止まったものの、繁殖牝馬所有者賞は、かなりの大鉈が振るわれた形だ。

 ここでAとB、2頭の競走馬についてシミュレーションしてみよう。

 Aは新馬1着、500万円(一般)1着、トライアル重賞2着、桜花賞1着と4戦3勝の成績を残したと仮定する。Bは新馬2着、未勝利を2、2、1着。その後、500万円以下の特別を2着としよう。

 Aの繁殖牝馬は預託馬、Bの繁殖牝馬は自己所有馬であった場合、この2頭の生産馬によって交付される生産牧場賞と繁殖牝馬所有者賞の金額は、ともに168万円と同額になる。

 Aは生産牧場賞のみの交付なので、新馬30万円、500万円以下の一般競走30万円、トライアル重賞2着で28万円、桜花賞1着で80万円の合計168万円。

 Bは新馬、未勝利2着3回、1着1回で生産牧場賞が36万円+30万円、繁殖牝馬所有者賞が36万円+30万円。ここまでで132万円である。それに500万円以下の特別競走2着分18万円+18万円を加えると、同じく合計168万円となる計算だ。

 ただしこれはあくまで生産者に交付される金額に限定した話であり、Aにはこれとは別に繁殖牝馬所有者に対して計250万円の所有者賞が交付されるのだが・・・。

 自己所有馬と預託馬とではこれだけの落差が生じる。だが、経営の安定のために、また、販売に関わる苦労から解放されたいと考える生産者は、できることなら自己馬よりも預託馬や仔分けの繁殖牝馬をなるべく増やしたいと考えている。

 それだけ生産者の懐事情もまた厳しくなっているのである。

(写真・札幌競馬イメージ)

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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