2011年に向けて

2010年12月22日(水) 00:00

 今年もあと残すところ今日を入れて10日のみ。早いものだ。ついこの間、新しい年を迎えたと思ったらもう「有馬記念」である。

 先週の「朝日杯FS」は、ついに掲示板全てが社台グループ生産馬で占められた。注目のディープインパクト産駒は2着と3着。初GIタイトルを僅差で逃したものの、来年の3歳クラシックでは多くの有力馬が“団体”で出てきそうな気配だ。勝ち上がり率、頭数ともに期待に違わぬ活躍である。

 “社台色”がとりわけ強かった一戦だったが、どうやら今週もまた似たような雰囲気が漂う。他の媒体から「有馬記念の予想を」と求められたものの、日高の生産馬を中心に印を打って行くと、予想が成り立たないような状況だ。日高生産馬であっても、父馬欄には社台スタリオン繋養の種牡馬名が並び、日高地区の種牡馬はほとんどいない。

 ある意味、これは2010年の競馬を象徴しているだろう。ともかくも、社台の影響力は圧倒的だ。12月14日現在における中央・地方を通じてのリーディングサイアーランキングでは、サラブレッド全馬総合部門で1位(キングカメハメハ)から13位(ゼンノロブロイ)まで全て社台スタリオン繋養馬が並ぶ。

 2歳に限っても事情はほとんど変わらず、トップを独走するのはもちろんディープインパクトである。

 さて、このほど社台スタリオン繋養種牡馬の2011年度種付け料が発表された。ディープインパクトは産駒の活躍に後押しされるように来年度は1000万円(+100万円)となった。

 ディープを筆頭に、キングカメハメハ、ゼンノロブロイ、マンハッタンカフェが500万円、ここまでは「受胎確認後の支払い」ではなく、「前納、不受胎時全額返還」である。

 以下、ダイワメジャー、ハーツクライ、ネオユニヴァースの400万円が続く。フジキセキは350万円。クロフネ、ゴールドアリュール、シンボリクリスエス、スペシャルウィークが300万円。400万円からは「受胎確認後9月15日支払い」の条件になる。

 日高の生産者の感覚からしてみれば決して安くはない価格だが、依然として社台の種牡馬は根強い人気がある。実際のマーケットを想定すると、これらの人気種牡馬を配合せざるを得ないのである。だからこそ、今年も4000頭もの繁殖牝馬が社台に集まった。日高でも中部や東部(新ひだか、浦河、様似、えりも)からだと決して近くない距離だが、そうは言っていられないのだ。

 ただし、こうした生産界においても競馬においても、ワンサイドゲームになってしまっているあたりに競馬人気低迷の一因がある気がする。不景気やファン層の高齢化ばかりではないはずだ。社台VS日高という構図で、白熱したレースを展開してこそ、競馬は面白い。だが、現実は、今週末の「有馬記念」出走馬の顔ぶれにも如実に表れているように、今や日高産馬は「同じ土俵に立つ」ことさえ厳しくなっている。

 競馬人気復活の鍵は、日高の復権にかかっている。いかに社台軍団に肉薄し、互角の勝負に持ち込めるか。そのために、何をしなければならないのか。来年はそれがより厳しく求められる年になるだろう。

 ともあれ、1年間当コラムをご高覧頂き、感謝申し上げる次第。来年も生産地の生の声をお伝えすべく努力するつもりです。

 1年の最後くらいは、心温まる話題で締めくくりたいと思ったが、どうにも明るいニュースが私の周辺にはない。だからというわけではないが、せめて画像だけでもと考え、目前に迫ったクリスマスにちなんだ写真を添付しておく。

 数日前、浦河ポニー乗馬スポーツ少年団のクリスマス会に登場したサンタクロースである。生産地らしく? トナカイならぬポニーが馬車を牽いている。暗闇から電飾満載の馬車とポニーが登場する趣向である。

 来年こそ、明るい年になって欲しいと願うばかりだ。

(写真・ポニー少年団サンタクロース)

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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