ばんえい調教見学ツアー

2011年01月19日(水) 00:00 0

 帯広競馬場で、年末12月26日より朝の調教見学ツアーが始まっている。毎週日曜日の朝限定で定員は10名。告知によれば、午前6時からスタートで概ね30分~1時間の所要時間だという。

 さっそく、どんな様子なのかと思い、去る1月16日に現地に行って来た。

 私の住む浦河から帯広までは約140キロの道のりだ。札幌よりは幾分近いものの、難所は国道236号線の野塚トンネル周辺である。この時期は完全なアイスバーンになっており、しかも天候急変により、時々視界がひどく悪くなる。そのため前日夕刻に家を出て、安ホテルに投宿することにした。

 16日は早朝からあいにくの雪模様であった。午前5時50分に競馬場へ到着。車の温度計は「マイナス16度」を表示している。北海道の場合、雪が降ると気温はやや高めになる。むしろ晴天の方がいわゆる放射冷却現象により気温は低下する。しかし、帯広は雪が降っていても、十分過ぎるほどの寒さであった。

 三々五々、車で調教見学ツアー参加者が集まってきた。12月26日以来、1月1日、2日、9日、そしてこの16日とまだ5回目。私以外にも取材目的で来ている人がいる。

(写真・朝の調教見学1)

 みんな“完全防備”である。見栄を張って軽装で参加するのはほぼ「自殺行為」だ。気温が低いので雪はもちろんパウダースノー。持参したカメラにも容赦なく降り積もるが、一向に溶けない。

 全員が揃ったところで係の方が2人ついて前後を固め、入り口より中に入る。もうかなり多くの人馬が調教を始めている。ツアー参加者のほぼ全員がカメラを手にしている。平均年齢はかなり高い。男女比は7対3といったところか。ばんえい競馬ファンというよりは、むしろ写真マニアの方が多いかも知れない。

 午前6時はまだ日の出前である。したがって撮影はかなり厳しい。おまけに雪が舞い、条件としてはやや悪い日を引いてしまった。

(写真・朝の調教見学3頭)

 オレンジ色のコートを着たOPBM(オッズパークばんえいマネジメント)の担当者が申し訳なさそうな口調で「晴れていると朝日を背景に良い写真が撮れるんですけどね」などとみんなを慰めてくれる。まあ、しかし、これはしょうがない。

 熟年の団体(おそらく愛好者の集まったフォトクラブのような方々)は、三脚を立て、カメラをセットし被写体を追う。中には「こだわり」なのかフィルムカメラを駆使する人もいる。もちろん暗がりであってもストロボは厳禁だから、感度を上げるか、シャッター速度を落とすか、それぞれ思い思いの設定でシャッターを切る。

(写真・朝の調教見学・犬同行)

 撮影ポイントは2ヵ所用意されている。実は過去、3回ほど朝の調教を撮影したことがあるが、その時にもやはり同じ場所で撮るように指示された。いくらスピードが遅いとはいえ、多くの人馬が行き交う中を自由に歩き回ることはできないのでこのルールは厳守しなければならない。

 係員が2人いるのは、表現は悪いのだが「監視」のためである。ついつい撮影に夢中になり、危険ゾーンまで足を踏み入れたりする人がいないように見張る必要があるのだ。

(写真・朝の調教見学2)

 走路と撮影エリアとの間に柵などはなく、言うならば、走路脇に立ったままで見学することになる。したがってどのカメラマンも似たような構図でしか撮影できない制約がついて回るが、現状ではこれ以上は望めまい。

 やがて徐々に明るくなってきた。この時期の日の出は午前6時半前後。ただ雪が依然として降り続いているので太陽の顔を拝むことはできない。

(写真・朝の調教見学,背中)

 約1時間近く経ったところで次のポイントに移動することになった。

 スタンドから見ると、レースが行われる走路のすぐ裏に調教用の障害コースが設置されているのをご存知の方もおられよう。橇をスタート位置まで運ぶ電気軌道のレール上が2つ目の見学ポイントであった。

 ここではもっぱら障害を上り下りする人馬を撮影する。だがこの頃になるとさすがにじっと立ち尽くしたままの姿勢なので寒さが体に忍び寄ってきた。手袋をしていても指先がやや冷たい。

 終了は7時20分前後。ありがたいことに場内の食堂にて湯茶のサービス付きである。そこで初めて全員の素顔を確認することができた。

 今回、本州からの参加者は若い男性が1人だけ。あとはみんな道内在住者ばかりであった。

 この見学ツアーはなかなか好評らしく、今のところ「無期限で毎週日曜日に実施する予定」だという。

 ただ、「絵になる」のは、やはり冬場であろう。調教で汗をかき、全身から湧き上がる湯気に馬体が包まれた写真はこの時期でなければ撮れない。寒ければ寒いほど良い。

 なお、このツアーはあくまで帯広競馬場の「プレミアムラウンジ利用者のオプションサービス」とのこと。

 したがって朝の調教見学のみの参加はできない。プレミアムラウンジは料金2,000円。土曜日にそこで競馬を見て翌朝に調教見学か、さもなくば、日曜朝に調教見学の後、その日にラウンジで競馬見学か、いずれかになるだろう。

 一応、問い合わせ(申し込み)の電話番号を記しておくので興味のある方はご連絡を。0155-34-0825帯広競馬場・広報が窓口だ。ちなみに2月6日までは残りわずかとなっているが、13日以降はまだ余裕があるらしい。ぜひ一度見学されたし。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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