2011年02月02日(水) 00:00 0
1997年(97年)より始まった「ひだかトレーニングセール」(主催・ひだか東農協=浦河)は、昨年の2010年まで14年間連続で毎年開催されていたが、いよいよ今年は実施に暗雲が立ち込めている。
2月1日の段階では「確定ではないが・・・」という前置きで、ひだか東農協側では「このままではほとんど開催を中止せざるを得ない」との見通しである。
1997年5月13日に第一回が実施された「ひだかトレーニングセール」は、牡25頭、牝16頭の計41頭が上場されて、そのうち牡19頭、牝10頭の計29頭が落札される上場の滑り出しであった。
牡馬は19頭で2億1010万円を、そして牝馬は10頭で5470万円をそれぞれ売り上げ、合計2億6480万円の売却総額を記録した。
売却率は70.73%。牡馬に限っては実に76%もの数字を記録し、平均価格も1100万円を超えた。
こうした好結果が追い風となり、その後数年は上場頭数、売却頭数、売却総額のいずれもほぼ順調に数字を伸ばした。
ピークを迎えたのは2000年。
この年には103頭(牡61頭、牝42頭)が上場。うち牡43頭、牝28頭がそれぞれ落札された。牡馬は実に6億2200万円、牝馬も2億610万円の大商いとなって、合計8億2810万円もの驚異的な売り上げを記録した。
ひだか東農協がトレーニングセールを主要な事業として位置づけたのもこの頃である。牡馬の平均価格は1446万円、牝馬でも736万円と、1歳秋より2歳春までの調教費用を上乗せしても十分に採算の取れるレベルの取引となり、市場は明るいムードに包まれた。
しかし、翌年の2001年になると、数字が大きく落ち込んでしまった。上場頭数が78頭(-25頭)、になり、落札頭数こそ50頭(牡34頭、牝16頭)を確保したものの、総額は5億円そこそこにまで激減したのであった。
以後、ほぼ5億円を挟んだ水準で一進一退を繰り返し、2007年までは何とか持ちこたえていたものの、2008年には116頭もの上場頭数を確保しながら、ついに45頭の落札にとどまり、総額も3億587万円に終わる。
その結果を受け、2009年には53頭の上場頭数と前年の半分以下にまで落ち込み、29頭が落札されたが売り上げは2億円を初めて切ってしまった。
この頃より水面下では翌年の開催を危ぶむ声が上がってきていた。昨年の2010年には年明けになっても思うように上場予定馬を確保できない状態が続き、関係者が必死に営業活動を展開して各育成牧場などに上場を呼びかけた経緯がある。
昨年は66頭が上場、30頭の落札で売り上げは2億円の大台を辛うじて確保できたとはいえ、この数字では、正直なところ必要経費も出るかどうかという水準であろう。
50頭も100頭も、トレーニングセール開催そのものの手間は変わらないので、ある程度以上の売り上げ確保が絶対条件なのは言うまでもない。
とはいえ、ひだかトレーニングセールは、唯一浦河で開催される市場で、地元の生産者や育成業者にとっても貴重な販売機会であったのも事実だ。
仮にこのまま今年度の開催が中止となれば、2歳馬に関しては、札幌競馬場で開催される予定のHBAトレーニングセール(5月24日)へ上場するより他なくなる。限られた騎乗者だけで日々の調教をこなす小規模な育成業者にとっては、大きな負担にもなってくるのである。
まだ最終的に結論が出ていないとはいえ、このままでは開催は相当に厳しそうだ。残念だが、これも今の時代の反映なのかも知れない。地理的ハンデや上場馬の質と数、何よりセール出身馬のその後の競走成績によって、この市場の存在意義が大きく問われてきているのだろうか。
田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。