競馬の奥の深さ

2011年02月02日(水) 18:00

 こうは考えられないだろうか。何事も経験があって自分があると。だから、また新たな経験を積んでいきたいと思うのだと。

 確かにそのようには言える。だが、それはある期間やり続けた結果得られたひとつの心境のようなもので、最初からそのように自覚はしていないのが常だ。「継続は力なり」はこんなところから生まれてきたのだろう。やり続けることで得られる貴重な財産、先人はこのことを指摘している。

 競馬だって、よく考えると馬鹿にできない貴重な経験を生み出してくれている。こちらは止めようと思っても止められずに続けているようなところがあるが、それでも続けることで得難い体験を積み重ねている。

 先日、競馬場のスタンドで多くの皆さんに御自分と競馬ということでインタビューを試みた。競馬場に来られるほどの方々なので、実に熱く語っておられた。そして、そこから見えたのは、目の前を駆け抜ける馬たちから受けるものが如何に大きいか、ここにいるからこそ受ける競馬の奥の深さであった。

 馬の美しさは勿論のこと、一頭一頭の表情を覗き見るのが楽しいと、レースを終えて引き揚げてくる馬たちを目で追い続けている若者たち。ああ、競馬っていいなという思いにこの身が満たされていった。こうした経験は積み重ねていくほどに得難い財産になっていく。ここにやってきている皆さんは、競馬の奥深いところに目が届いていて、ひとつの境地に到達しているのだ。もしかしたら、スタンドの上の方に陣取って取材に追われている者たちよりも、遙かに競馬の奥深いところに手が届いているのではないか、そんな思いに到った。

 何事も経験があって自分があるとは言っても、当然のことながら、その経験の質の問題がある。新たな経験の中に、新たな発見があってこそ、継続する意味がある。スタンドの皆さんから得たものは、大きかった。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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