南米大陸最強馬がゴドルフィンにトレード

2011年02月08日(火) 00:00

 「南米の凱旋門賞」と呼ばれるG1カルロスペレグリーニ大賞を制した、南米大陸最強馬シンシュリン(牡3、父ワンダートロス)が、ゴドルフィンにトレードされ、3月26日のワールドC開催を目指すことになった。

 ブラジル産で、エスタニスラウ・ペトロシンスキー調教師の管理下で走り、ここまでの戦績7戦5勝。2歳時,デビュー勝ちを果たした直後に、いきなりG1フリアーノ・マルタン大賞に挑み、ここも難なく通過してG1制覇を飾って、エリート街道に乗ったのがシンシュリンである。続くG1銀杯牡馬大賞は4着に敗れたものの、3歳緒戦となったブラジル版の2000ギニー・G1イピランガ大賞を、2着以下に7.1/2馬身もの差をつけて圧勝してまず1冠を獲得。続くG1サンパウロジョッキークラブ大賞は3着に敗れたが、大目標だったブラジル版ダービー・G1ダービーパウリスタ大賞を、今度は6.3/4馬身差で制し、2冠目も無事に通過した。

 クラシック戦線における圧勝続きに意を強くした陣営は、次走、アルゼンチン遠征を敢行。ブエノスアイレスの北20キロほどの地点に位置するサンイシドロ競馬場を舞台とした、G1カルロスペレグリーニ大賞に参戦した。南米の各国から強豪が集うこのレースでも、スタートから先手をとったシンシュリンは2馬身差の逃げ切り勝ちを収め、南米最強馬の称号を手にしたのである。遠征競馬は初めてで、古馬と戦うのも初めてというハードルを楽々とクリアしたあたり、「相当の大物」というのが現地における評価だった。

 当初の予定ではそのままアルゼンチンに留まり、3月に行われるラテンアメリカジョッキークラブ協会大賞を目指す路線が敷かれていたのだが、シェイク・モハメドの目に止まり、電撃トレードが成立したのである。南米時代の所有者ホセ・レナト・ツッキ氏が「今回のディール内容に、私は大ハッピーです。シンシュリンが新たな所有者のためにたくさんの大レースを勝つことを希望します。私の目はもはや、ズニードという現在2歳となるシンシュリンの全弟に向いています」とコメントしているところから推察するに、相当に条件の良いオファーがあったのであろう。

 シンシュリンは既にドバイに到着しており、昨年からゴドルフィンの第2厩舎として稼動しているマームード・アル・ザルーニ厩舎所属馬として、ワールドCナイトを目指すことになった。

 目標は当然、1000万ドルレースのドバイワールドCかと思いきや、ゴドルフィンのレーシングマネージャーを務めるサイモン・クリスフォード氏によると、ワールドCも視野には入っているものの、「現段階ではUAEダービーに向かう公算が大きい」とのこと。シンシュリンは、南半球の年齢の数え方ではまだ3歳で、言うまでもなくUAEダービーの出走資格はあるのだが、ファンとしての南米最強馬の強さをドバイワールドCで発揮してもらいたいところである。

 それにしても、今年もドバイワールドCナイトは、南米勢の布陣が強力になりそうだ。2月3日にメイダン競馬場で行なわれた、ドバイワールドCへ向けた前哨戦のG3マクトゥームチャレンジ・ラウンド2も、G1ダーバンジュライを制している南アフリカの最強馬ボールドシルヴァーノ(牡4、父シルヴァーノ)が楽勝。ボールドシルヴァーノを管理するマイク・デコック師と言えば、04年のドバイワールドCにヴィクトリームーンで挑んで3着、08年のワールドCにアジアティックボーイで挑んで2着、そして昨年のワールドCにリザーズディザイアで挑んで鼻差の2着と、世界最高賞金レースで惜敗続きの調教師さんである。そのデコック師をして「ボールドシルヴァーノで挑むドバイワールドCは、私にとって最大のチャンスとなるだろう」と、自信のほどを語っている。

 09年のカルロスペリグリ−ニ大賞勝ち馬で、現在はパスカル・バリー厩舎所属となっているインタラクション(牡4、父イージングアロング)も、ボールドシルヴァーノが制したG3マクトゥームチャレンジ・ラウンド2で3着に入り、本番での巻き返しを狙っている。

 近年にない精鋭揃いでドバイワールドC開催に挑む日本勢だが、残念ながら、タフな戦いが待ち受けることになりそうだ。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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