種牡馬展示会始まる

2011年02月15日(火) 23:59 0

 馬産地は2月の声とともに一斉に動きが始まる。生産者団体である軽種馬生産振興会の総会が順番に開催されるのも2月ならば、各スタリオンが繋養する種牡馬の展示会を開催するのも2日である

 今年の展示会は10日(木)のビッグレッドファームを皮切りに、14日(月)はダーレー、15日(火)は社台スタリオンと続いた。
 10日のビッグレッドファームは、折から地元新冠町の軽種馬生産振興会と日程が重なったために、来場者は例年よりやや少な目の約250人。加えて、新種牡馬がいなかったこともあってか、今年はいくぶん地味な印象であった。

(写真・ビッグレッド展示会全景)

 昨年よりここで繋養されているコンデュイットの当歳馬がすでに生まれており、そのうち3頭が厩舎横で展示されていた。実際に産駒を見て今年の配合を検討して下さい、ということであろう。ビッグレッドの主力選手は今、このコンデュイットなのである。

(写真・ビッグレッド、コンデュイット当歳展示風景)

(写真・コンデュイット)

 その一方で、このスタリオンのかつての主力種牡馬ロージズインメイは、今年受胎確認後で80万円の種付け料に値下げとなった。これも時代の流れとはいえ、何とも複雑な心境だ。確か供用初年度は420万円ほどではなかったか。改めて種牡馬ビジネスの世界の厳しさを感じる。

(写真・ロージズインメイ)

 14日(月)はダーレースタリオンの展示会が行われた。充実した飲食ブースやトークショーなど、ダーレーの展示会は、いまや馬産地日高の名物にもなりつつある。

(写真・ダーレー展示会全景及びテント)

(写真・ダーレー展示会全景及びテント)

 展示会場横にはフランスから輸入されたという巨大テントが3基設営され、まずその威容に度肝を抜かれた。中は広く、しかも明るい。毎年感じることだが、ここまでサービスする必要があるのだろうかというほどの接待なのである。ここに足を踏み入れる度に、種牡馬展示会の常識が完全に覆されてしまう。しかも年々“進化”している点も見逃せない。

 天候にも恵まれたせいか、この日は650人の関係者が一堂に会した。種牡馬のラインナップは昨年と同じく9頭だが、今年はアドマイヤムーンの初年度産駒がデビューする年である。すでにダーレーは日高において独自の地位を占めつつあるものの、今年は種馬場としての真価がいよいよ試される年になりそうだ。

(写真・アドマイヤムーン)

 翌15日(火)は、社台スタリオンの展示会であった。すでに各媒体を通じて、展示会の様子が伝えられていることと思うので、敢えて屋上屋を重ねるようなことは書かずにおく。

(写真・社台S展示会全景)

 今年の新種牡馬はハービンジャーとヴァーミリアン。ハービンジャーは周知の通り、キングジョージ?世&クィーンエリザベスSを史上最大着差(しかもレコード)で優勝した名馬だが、写真で見るよりも実馬はずっと素晴らしかった。

(写真・ハービンジャー)

 見た目よりも馬体重があり、何より威風堂々としている。顔も聡明さが出ていて、かなり頭が良さそうな印象の馬である。

 すでに配合申し込みが多く「ほぼ満口」になっており、この展示会のために敢えて若干数の残口を残してある、という余裕だ。おそらく、その残口も展示会を開催しているうちにすぐ埋まったことだろう。因みに種付け料は受胎確認後支払いで400万円。

 もう1頭のヴァーミリアンについてはもはや余計な説明は不要であろう。いかにも長い間第一線で活躍してきた馬らしく、気の強さとある種の緊張感がそのまま持続しているような雰囲気が漂っていた。種付けも上手とのことで、多頭数配合もこなしてくれるだろう、とのこと。こちらは50万円と、かなりリーズナブルだが、初年度ゆえかなりの人気を集めることになるものと思われる。

(写真・ヴァーミリアン)

 ディープインパクトを筆頭に、その他の繋養種牡馬については、今さらここで屋上屋を重ねる必要もあるまい。この日集まった約700人の目に、社台スタリオンの豪華ラインナップがどのように映ったものか。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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