競馬学校騎手課程28期生の実習

2011年02月23日(水) 00:00 1

 やや古い話になってしまったが2月9日より15日までの1週間の日程で、JRA競馬学校騎手課程の28期生(6人)が、日高を訪れ実習を行った。

 28期生たちは昨年春に競馬学校に入学した騎手候補生たちである。卒業は来春の予定で、現在2年目だ。

 先頃、1期先輩の7人が卒業し、間もなくデビューすることになっており、報道などでは横山典弘騎手の子息(和生君)もその中の1人として注目されている。親子対決がもうすぐ実現しそうで、これは競馬にとってひじょうに喜ばしい話題になるはずだ。

 28期生6人は、しかし、こんな有名競馬人の子弟はおらず、全員が一般家庭からの入学だそうである。

 いったいどんな若者たちなのだろうと興味津々で、何度か実習風景を見学してきた。

 28期生の滞在先はJRA日高育成牧場。彼らはさっそく10日(木)よりJRA育成馬(4月に中山で開催予定のJRAブリーズアップセールに上場される2歳馬)に騎乗し、デビュー前の若駒を調教することになった。

(写真・28期生)

 ヘルメットは赤白のツートンで、これを競馬学校騎手課程在学期間ずっと着用することになる。まず、JRA職員に混じって屋内の角馬場で常歩から速歩まで体をほぐす。

(写真・28期生)

(写真・28期生)

 その後、すぐ隣にある屋内800mのダートコースで軽いキャンターを行う。乗り慣れない2歳馬を御しながらも何とか周回し、その後いよいよ約500m離れた場所にあるBTC坂路コースに移動した。

(写真・坂路)

(写真・坂路)

(写真・坂路)

 ここは民間の育成牧場と共用の施設で、他の牧場の育成馬たちと混じっての調教となる。冬場は雪に閉ざされているため、BTCの利用可能な施設は坂路の他、600mダートと1000mウッドチップコース(いずれも屋内)に限られており、見ていると相当な“混雑”である。

 28期生は1人乃至2人がJRA職員の後を追走する形で坂を駆け上がってくる。やはり、2歳馬は意のままにならないらしく、まして初めて騎乗することもあり、どの生徒も真剣そのものの表情だ。

 来るブリーズアップセールでは、この28期生が実際にJRA育成馬に騎乗することになるので、いわばこの実習はそのための訓練の一環とも言える。午前に調教、午後は作業という日程が1週間続いた。

 ところで、11日(金)夜には初めて騎手課程の生徒たちが浦河ポニー乗馬スポーツ少年団を訪れた。

 昼間、実習で騎乗している時の彼らの表情は緊張もあってずいぶん硬かったのだが、この夜はすっかりリラックスムード。10代後半の若者の顔に戻り、横一列に並んで熱心に少年団の練習風景を見学していた。

(写真・騎手課程6人)

 彼らの服装は、昼間育成馬に騎乗したスタイルそのままで、実はここでも「騎乗する」ことを前提に訪問したのであった。

 13頭のポニーがまず少年団の子供たちを乗せて通常の練習を披露する。約20分後に2鞍目となり、そこで28期生たちは、おのおの自分で騎乗してみたいポニーを選んで乗り代わりとなった。

(写真・部班28期生)

 同じ馬とはいえ、さすがにポニーはいささか勝手が違うらしく、感触を掴むのに結構苦労していた。ただ、どの生徒からも微笑が漏れる。ポニーには乗ったことがない生徒ばかりのようで、みんな楽しそうだ。

 常歩から速歩、そして、キャンターから最後はクロス障害飛越まで一通りこなした。

(写真・障害飛越)

 まだデビュー前とはいえ、少年団員にとっては騎手の卵たちは憧れの存在である。実際にここにも騎手志望の団員が4人おり、練習後には短い時間だったが対面式で懇談する場面もあった。

 北海道にいると、日々の生活の中では騎手課程の生徒たちと間近に接する機会など皆無である。また、彼らも実習がなければわざわざ生産地までやってくるチャンスはそうそうあるまい。その意味では、とても意義のある訪問であった。

 来年以降もぜひ実現して欲しいと思う。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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