2011年02月26日(土) 00:00
22日、ニュージーランド・クライストチャーチで大地震が発生しました。地元の方々だけでなく、多くの日本人が被災し、いまだに安否を確認できない方も大勢いらっしゃいます。遠い国の出来事とはとても思えません。
ニュージーランドは競馬大国。クライストチャーチにも2つの競馬場があります。1つは、ギャロップ(平地・障害)のRiccarton競馬場。もう1つはハーネス(繋駕)のAddington競馬場です。私は、03年にAddington、09年にRiccartonでレースを観戦しました。
Addingtonは市の中心部にほど近い住宅街の中にある競馬場。浦和や、今はなき高崎、宇都宮を思わせるような感じです(場内の雰囲気はまるで違いますが)。一方、RiccartonはAddingtonよりも少し遠い市街地のはずれにあり、周りに高い建物がないため、とても広々とした風景を眺められる、のどかな競馬場でした。09年にRiccartonに行った時には、当時、ニュージーランドで“修行中”だった愛知の山本茜騎手の姿を見かけています。
地震の後、Riccarton競馬場では25日(金)の開催を中止にしました。しかし、コースやスタンドは大きなダメージを受けておらず、スタッフやその家族も全員無事。なので、次回、来月10日(木)の競馬は、今のところ開催する予定だそうです。
また、Addington競馬場では、来月25日と4月1日、8日(いずれも金)に「インタードミニオン2011」が行われることになっています。これは、オーストラリアとニュージーランドのハーネス競馬で最も大きなイベント。両国からトップホース、スタードライバー(=騎手)が多数参戦し、チャンピオンを決めるレースが繰り広げられます。
開催地は、両国の主要都市にある競馬場の“持ち回り”。Addingtonでの開催は03年以来8年ぶり、ニュージーランドで行われるのも05年以来6年ぶりのことです。
同競馬場の公式サイトによると、こちらもその施設に大きな被害はなく、「周囲の状況を慎重に見極めているところ」ではあるものの、「現時点でスケジュールに変更はない」としています。
われわれの感覚からすると、これほどの大地震に見舞われたところの競馬場が、たとえ施設が無事だったとしても、即座に「当分の間、開催を自粛する」と発表しないのは、ちょっと信じられません。
RiccartonとAddingtonの主催者が、あくまで予定どおりの開催を前提としているのは、「重要なのは、競馬を“生業”としている人たちが、一刻も早く“日常”を取り戻すこと。そうしなければ被災者の救済も進められない。開催できるなら開催したほうがいい」というポリシーがあるから、だと思います。
ただし、「インタードミニオン」の開催については、来週初めに新たな発表があるそうです。現地の競馬が平常に戻るには、まだまだ時間がかかるでしょう。
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矢野吉彦
テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。