マクトゥーム家とクールモア軍団がドバイで激突

2011年03月15日(火) 11:30

 メイダン競馬場を舞台とした2回目のドバイワールドC開催が、来週の土曜日(3月26日)に迫っている。

 メインレースとして行われる賞金総額1000万ドルのドバイワールドC制覇を目指す、日本馬の布陣は過去最強と言われているが、アラブ種のレースを含めれば総額で2625万ドル(約22億円)の賞金を懸けて争われる8つの国際競走を目指して、世界各国から集う顔触れも豪華絢爛である。

 大きな話題の1つが、エイダン・オブライエン調教師率いるバリードイル軍団の参戦だ。

 オブライエン軍団をバックアップするアイルランドのクールモア・グループと、ワールドC開催を主催するドバイのマクトゥーム家は、世界のことに欧州において、競馬と生産を牽引する2大巨頭と称される組織である。せり市場における良血馬を巡る争奪戦をはじめ、なにかと張り合うことの多いのがクールモア軍団とマクトゥーム家で、日頃のライバル心が互いに反発心を抱くまでに高まって、ここ数年のクールモア軍団はマクトゥーム家が主催するドバイ開催をボイコットしていたのであった。

 ところが今年は、ドバイWCとシーマクラシックにダブル登録しているケイプブランコ(牡4、父ガリレオ)、UAEダービー出走を目論むマスターオヴハウンズ(牡3、父キングマンボ)とアレグザンダーポープ(牡3、父デインヒルダンサー)の3頭がスタンバイ。このまま出走にこぎつけると、05年のシーマクラシックに出走して5着となったパワースコ−ト以来6年振りの、クールモア軍団によるドバイ出走となる。

 特にケイプブランコは、昨年愛チャンピオンSと愛ダービーという2つのG1を制し、ワールドランキングでも3歳インターメディエイトの部門で世界首位に立った超大物だ。現状ではドバイWC出走が有力視されているが、シーマクラシックのいずれに出走するにしても、有力馬になることは間違いなく、その走りは大いに注目されることになるはずだ。

 昨年秋、日本のエリザベス女王杯、香港の香港Cを、いずれも驚異的な末脚で制して、世界をあっと言わせたスノーフェアリー(牝4、父インテイカヴ)の、今季初戦もドバイになる模様だ。

 アジア遠征から帰厩後、馬に楽をさせたこともあって、体重が55ポンド、約25キロも増えたと伝えられた同馬。しかも、今年の欧州は冬が厳しく、冷え込みに加えて例年以上に雪が降ったことで、スノーフェアリーの調整は当初のもくろみに比べて遅れることになった。陣営は、今季のキャンペーンのスタートを香港のクイーンエリザベス2世C(5月1日、シャティン)まで遅らせることも検討したが、ここへ来てようやく調整のペースが上がり、管理するエド・ダンロップ調教師からドバイ出走表明が出たのが、3月5日(土曜日)のことだった。

 2歳時に、リングフィールドのオールウェザートラックで勝ち星を挙げているため、当初はドバイワールドC参戦が取り沙汰されていたスノーフェアリーだが、陣営は走りなれた芝のレースを選択、2400mのシーマクラシックに向かうことになった。あの「瞬間移動した」と言われる怒涛の追い込みをメイダンでも披露できるかどうか、これも注目である。

 昨年のワールドランキングを再度俎上に上げれば、古馬スプリント部門世界第2位のジェイジェイザジェットプレーン(セン6、父ジェットマスター、アルクオーツスプリント登録)、同部門で世界第3位のロケットマン(セン5、父ヴァイカウント、ゴールデンシャヒーン登録)、古馬の芝インターメディエイト部門で世界第3位にランクされたトゥワイスオーヴァー(牡6、父オブザーヴァトリー、ドバイWC登録)、3歳ダート・インターメディエイト部門で首位に立ったフライダウン(牡4、父マインシャフト)らが参戦を予定している。

 もちろん、豪華なメンバーの一角をなすのが、日本から参戦する精鋭5頭だ。各国の陣営や主催者サイドからも、今年の日本勢は強そうとの声がしきりに聞こえてきている。

 次回のこのコラムで、日本馬出走レースの詳しい展望をお届けしたいと思っている。

合田直弘氏の最新情報は、合田直弘Official Blog『International Racegoers' Club』でも展開中です。是非、ご覧ください。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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