2011年03月22日(火) 00:00 1
メイダン競馬場を舞台とした2度目の開催となるドバイワールドカップナイトが、3月26日に迫っている。5頭の精鋭で臨む日本勢にとって、決して容易ではないが、おおいに勝算のある戦いだけに、日本のファンの皆様にも御注目いただきたいところだ。
総賞金1000万ドルという世界最高賞金を懸けて争われるG1ドバイワールドC(オールウェザー2000m)は、出走馬の少なくとも半数に印を廻したくなる、超ハイレベルでの混戦模様となっている。
タペタというブランドの人工素材への適性や、現段階での調整具合を度外視し、能力だけで判断するならば、アイルランドから参戦するケイプブランコ(牡4、父ガリレオ)が最上位であろう。愛ダービー制覇を最大の勲章としている同馬だが、内容的に最も濃かったのが、昨年9月にレパーズタウンで行なわれた10FのG1愛チャンピオンSだった。スタートから自力で先手を取り、ハイラップを刻んで他馬を力でねじ伏せたレース振りは、強いの一語に尽きるものだった。同馬にとって最も適性のある距離は2000mであることは間違いなく、ここでの最大のライバルと目されるトゥワイスオーヴァーに6馬身近い差をつけたあのレースを再現されると、太刀打ちできる馬はいないかもしれない。
ただし、ここは昨年秋の凱旋門賞以来、ほぼ半年ぶりのレースである。今年の欧州は冬が厳しく、各陣営とも調整に苦労したと伝えられているだけに、現段階でのケイプブランコが仕上がり途上である可能性はおおいにある。また、オールウェザートラックでの実戦も初めてだけに、芝と同様のパフォーマンスが出来るかどうかは、やってみなければ判らないというのが実情だ。
現時点で、死角らしい死角がないのが、前哨戦のG2マクトゥーム・チャレンジ・ラウンド3を快勝したトゥワイスオーヴァー(牡6、父オブザーヴァトリー)だ。欧州10F路線のG1を3勝している実力馬が、オールウェザーにも適性があるとなれば、本番で大崩れする場面は想像しがたい。
ブエナビスタ、ヴィクトワールピサ、トランセンドの日本馬3騎にも、当然のように大きなチャンスがある。
昨年は芝のシーマクラシックに出て小差の2着となったブエナビスタの実力については、既にライバル陣営も充分に知るところとなっている。
昨年秋のフランス遠征では結果を残せなかったヴィクトワールピサだが、欧州のタフなコースにおける2400m戦は、この馬にとって最適の舞台ではなかったようだ。平坦コースの2000m戦こそ、同馬の能力がフルに発揮される舞台である。
同じような競馬をするケイプブランコとの兼ね合いがカギとなるが、能力的にはトランセンドも充分に優勝圏内にいる。 3頭とも実戦を走るのは初めてとなるオールウェザートラックへの適性がポイントになるが、馬場を巧くハンドリングできれば、日本馬同士による決着も夢ではないと思っている。
芝2400mの500万ドルレース、G1ドバイシーマクラシックの行方が風雲急を告げることになったのが、本番を6日後に控えた20日(日曜日)の朝のことだった。
英国から参戦する女傑スノーフェアリー(牝4、父インティカブ)の実力が抜けていると見られていたこのレースだが、なんとそのスノーフェアリーに故障が発生。シーマクラシックを回避するだけでなく、この後に予定されていた香港遠征も取りやめ、帰国の途に就くことになったのである。
名牝の一日も早い回復を祈る一方、これで俄然、日本から参戦するルーラーシップのチャンスが広まったことは確かだ。
残ったメンバーの中で最大の敵は、4歳シーズンの昨年、夏頃から急上昇して秋にはBCターフ制覇に結び付けた、英国調教馬のデンジャラスミッジ(牡5、父ライオンハート)となろう。早くから今季最初の目標をここと定めていた同馬。遠征に強いことも証明済みである。
ゴドルフィンがこのレースに差し向けるリワイルディング(牡4、父タイガーヒル)も、侮れない存在だ。追加登録をして出走した英国ダービーで3着と健闘した後、ヨークで行なわれたセントレジャーの前哨戦G2グレートヴォルティジュールSで重賞初制覇を果たした同馬。セントレジャーは距離が長すぎたか6着と敗れたが、その後はここを目標にじっくりと調整されてきた。昨年のこのレースで、ブエナビスタの快挙達成を小差で阻んだダーレミの弟という、日本キラーの血脈を背負っている点も不気味である。
ただし、スノーフェアリー抜きのメンバーならば、ルーラーシップが太刀打ちできない馬は居ないというのが筆者の見解である。
UAEダービーに出走するレーザーバレットにとって最大の敵は、ゴドルフィンがこのレースのために南米からリクルートしてきたシンシュリン(牡3、父ワンダートロス)だろう。南米の凱旋門賞と言われるG1カルロスペリグリーニ大賞勝ち馬という超大物で、この馬が能力を発揮出来る状態にあって、かつ、オールウェザーへの適性があった場合、ぶっちぎられる可能性もありそうだ。
レーザーバレットにも、オールウェザーへの適性があれば、大駆けの可能性があろう。
日本馬5頭には、東日本大地震で被災された皆様を勇気づけられるような、朗報を届けて欲しいと思う。
合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。