大震災から2週間

2011年03月26日(土) 20:00

 大震災から2週間。ようやく、いろいろなことが動き始めました。

 とはいえ、前に進みたくても上を向きたくても、様々な障害が立ちはだかっているため、思うようにできない状況も続いています。

 とくに重くのしかかっている問題の1つが電力です。4月17日までの中山競馬の中止と今月中の東日本地区(北海道を除く)での場外発売見合わせ、今月21日から4月8日までの浦和、大井、船橋競馬の中止などは、この影響の大きさを物語っています。

 このような状況がいつまで続くのでしょうか。報道されているところでは、電力の需要と供給のバランスが、4月末から5月初め頃にはひとまず落ち着いてくるとのこと。そのへんがなんとも微妙で、4月24日の東京競馬に延期された皐月賞には、「東京競馬場においても安定的な競馬施行に支障が生じるおそれがある場合は、京都競馬場での施行といたします」という但し書きが付けられました。まだまだ、確定的なことは言えません。

 一方で、確実に起こるとされているのが、夏場の電力不足。ゴールデンウィークの頃にいったんは競馬の開催が平常に近い形に戻ったとしても、夏には再び、安定施行に支障が生じる事態に陥ってしまいます。これは“必至”です。

 私がここで言うまでもなく、JRAも南関東の各主催者も、今は、そういう事態にどう対処したらいいか、検討に検討を重ねている最中と思われます。日々刻々、状況が変化している中では、一度決めたことを白紙に戻して、決め直さなければならないことも出てくるはず。「それでは先の予定を立てられない」という方もいらっしゃるでしょうが、今は我慢をお願いするしかありません。

 そして、我慢するだけではなく、様々な立場の人たちがいろいろ“前向き”な提案をして、それらをすり合わせながら、いい方向にことを進めていく取り組みも必要でしょう。

 とにかく求められるのは“節電”です。今後、関東での競馬を再開する際の節電策としては、ウインズなど場外発売所の一部休止、ナイター競馬の昼開催移行、ターフビジョンや一部モニターテレビの使用取りやめなどが挙げられます。

 そして、できる限りの節電に務めた場合でも「競馬開催にはこれだけの電力が必要」という見積もりを明らかにした上で、「開催しないと多方面にマイナスの影響が出る」ことを丁寧に説明して、一般の方々に開催を認めていただかなければなりません。ここ数日のプロ野球の混乱ぶりを見て、あらためてそう思いました。

 当分の間は、誰も経験したことのない“非常事態”が続きます。被災地のまっただ中にある岩手競馬の存続も極めて憂慮される状況で、それについても書きたいことが山ほどあります。このコラムも、しばらく“非常事態”が続くことをお許し下さい。

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矢野吉彦

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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