2011年03月31日(木) 00:00
この自分にどれだけの可能性があるか、誰しもがこう問いかけることがあるのではないか。そんなときの心の内は、決して穏やかではない。経験が人を作ると言うが、この穏やかでない胸の内を幾度となく救ってくれた摂理が自分にあったことが、どれほど大きかったかと、今、しみじみと実感している。
キンシャサノキセキが高松宮記念を連覇したことで、改めてこのことを思い出した次第なのだ。7歳、8歳でのGI連覇、遅生まれの南半球産馬という以上に晩成型という印象の強い馬だが、それにしても、今年の勝ち方は見事だった。長所である切れ味には、凄味さえ感じたのだが、そんなキンシャサノキセキには到底及ばなくとも、少なからず力をもらったように思えた。
どうなのかと自分に問いかけたとき、いつも、こう救いの道を作ってきたのだ。
焦る気持ちを抑えるには、自分は他人より奥手で10年は遅れているのだからゆっくり構えていればいいのだと言い聞かせるのが一番。そのうち、道が開けると。
隣で急ぐ人がいれば、いつもお先にどうぞとやり過ごすのだ。とにかく、焦っても仕方がないから、ずっとこう考えてやってきたのだが、キンシャサノキセキの快走は、こうした思いをくっきりと目の前に見せてくれた。
5歳でスプリント路線への転向、7歳7度目の挑戦で初のGIタイトルを4連勝で奪取と、その勢いは凄かったが、GI連覇のこの春は、さらにパワーアップしていたのだから、正に大器晩成のスプリンターと言っていい。自分が大器とはとても言えたものではないが、奥手という点は共通していると言わせてもらいたい。いや、そう思い続けていきたいのである。ゆっくり、ゆっくり、経験は才能だと実感する日を目指していきたいのだ。
信念を持つといっても、あくまでも自分にとって都合のいい考え方だが、競馬はこんな人間でも、十分に鍛えてくれる。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。