チャンピオンズマイル展望

2011年04月12日(火) 00:05

 今年からBMWが冠スポンサーとなり、これまで同日に行われていたクイーンエリザベス2世Cから分離されて独立の施行となったG1チャンピオンズマイル(芝1600m)の開催が、25日(月曜日)に迫った。残念ながら日本馬の参戦は無いが、興味深い顔触れとなったこのレースの展望をお届けしよう。

 レイティング最上位は、春の香港遠征はこれで3年連続となる英国調教馬プレスヴィス(セン7、父サーキー)である。前走はドバイのG1ドバイデューティーフリー(芝1800m)に出走し、スローペースにも関わらず道中最後方から直線で馬群の真ん中を切り裂いて差し切り勝ちを収め、2度目のG1制覇を果たした馬として、皆様のご記憶にも新しいはずだ。

 一昨年は、ドバイデューティーフリーが2着だった後、G1クイーンエリザベス2世C(芝2000m)に挑んで自身初のG1制覇を達成。昨年はドバイデューティーフリーで大敗を喫した後、クイーンエリザベス2世Cが5着だった同馬。今年も当初はクイーンエリザベス2世Cがターゲットと言われていたが、4月4日(月曜日)に設けられていた追加登録のステージで、チャンピオンズマイルに登録。どうやらこのままマイル戦の方に出て来る模様だ。

 JRAのウェブサイトに寄稿させていただいたドバイデューティーフリーの解説文の中でも触れていたのだが、クイーンエリザベス2世Cは英国のニューマーケットで行われる3歳クラシックの二千ギニー・千ギニーと日程が重複。主戦のライアン・ムーアが騎乗出来ない公算が強く、これはプレスヴィスにとって痛手になる。4月25日のチャンピオンマイルならムーアの騎乗に支障はなさそうで、その辺りも矛先変更の要因かもしれない。

 もっとも、アジアマイルチャレンジ第2戦の優勝馬が、アジアマイルチャレンジ第3戦に出走してくるのだから、道理と言えば道理である。どうせなら、この後はアジアマイルチャレンジ第4戦の安田記念に来てくれると、日本のファンにはありがたいところだ。

 ただし、プレスヴィスがマイル戦を走るのは、彼が4歳時だった3年前の7月、デビューが遅れた彼がまだ未勝利馬だった時代に、ヘイドックで走って(結果は5着)以来である。以降の20戦の中で、距離が最も短かったのは、ナドアルシバ時代のドバイデューティーフリー(1777m)。スタートが遅くエンジンの掛かりも遅い彼がマイル戦にどう対応するか、ライアン・ムーアの手綱さばきともどもに注目したい。

 帰国組も含めると、ドバイからの転戦組が、プレスヴィス以外に5頭いる。

 プレスヴィスの制したドバイデューティーフリーが4着だったのが、フランス調教馬のロイヤルベンチ(牡4、父ウィッパー)だ。プレスヴィスにとってドバイデューティーフリーが今季3戦目だったのに対し、ロイヤルベンチは前走が今季初戦。昨年12月のG1香港マイル2着とシャティン競馬場との相性も良く、ドバイでプレスヴィスとの間にあった2馬身半差を、ここで逆転する可能性はおおいにありそうだ。

 昨年のG1香港マイルでロイヤルベンチを退けて優勝し、おおきな期待を背負っての遠征となりながら、ドバイデューティーフリーでは8着と大敗したのがビューティーフラッシュ(セン5、父ゴーラン)だ。スローペースで先行しながら勝負どころでズルズル後退するという、不甲斐ない競馬を見せた同馬だが、4歳時に挑んだ安田記念でも大敗を喫しており、遠征に弱いタイプなのかもしれない。そうだとしたら、地元に戻ってのここで復活する可能性を否定出来まい。

 同じマイルの距離でも、ドバイではオールウェザーのG2ゴドルフィンマイルに出走して3着だったのがレッドジャズ(牡4、父ヨハネスブルグ)だ。英国調教馬で、元来が芝で競馬をし、英国におけるマイル路線の総決算G1クイーンエリザベス2世Sで3着に入った実績がある馬だ。この馬もゴドルフィンマイルが今季初戦で、叩かれての変わり身を見込めば争覇圏にいる1頭と見るべきだろう。

 ドバイではワールドCに出走してヴィクトワールピサの7着に敗れているのがムシール(牡4、父リダウツチョイス)だ。このところオールウェザー専門に使われているが、南アフリカ在籍時には芝のG1ゴールデンホースシューS(1400m)を制しており、芝適性に関しては心配なさそうである。1600mも、3歳時にぶっちぎっているUAE2000ギニーの距離で、これもノーマークにはしづらい馬だ。

 一方、ドバイではスプリント戦のG1ゴールデンシャヒーンを使い、ロケットマンの3着と健闘したのがサニーキング(セン8、父デザートキング)だ。1600mでの好走実績はあるが、本分は1400mまでの馬で、この顔触れに入ってのマイル戦では厳しい戦いになりそうだ。

 日本のファンにとっての注目は、地元香港のイクステンション(牡3、父ザール)。現在日本で供用されているザール産駒の同馬。英国調教時代には、G2ヴィンテージSを制している他、G1デューハーストS・3着、G1ジャンプラ賞3着、G1英二千ギニー4着といった実績を残している。香港移籍後は未勝利だが、香港G1クラシックマイル2着、香港G1香港ダービー2着と悪くない競馬をしており、そろそろ本領発揮をしてもおかしくはない頃である。

 多士済々の顔触れで争われるG1チャンピオンズマイルに、ぜひご注目いただきたい。

合田直弘氏の最新情報は、合田直弘Official Blog『International Racegoers' Club』でも展開中です。是非、ご覧ください。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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