JRA育成馬展示会

2011年04月13日(水) 00:00

 4月11日(月)、浦河のJRA日高育成牧場において恒例のJRA育成馬展示会が開催された。

 午前10時。生産者や調教師、馬主などが集まる中、一冬をここで過ごし調教を積まれてきた2歳馬たちが5班に分かれて次々に登場し、展示が始まった。

 この日の展示頭数は計62頭。牡37頭、牝25頭という内訳で、この中には、JRA日高育成牧場にて生産された7頭の2歳馬(いずれも父デビットジュニア、牡6頭、牝1頭)も含まれている。

 日高の62頭に加え、宮崎育成牧場でも例年通り24頭が育成されており、合わせて86頭が来る4月25日に開催予定の「JRAブリーズアップセール」に上場されることになっている。

 やや肌寒くはあったものの、11日は晴天に恵まれ、時間の経過と共に多くの関係者が訪れ、予想以上の賑わいであった。ただし、例年と比較すると調教師や馬主はやや少なかった気がする。大震災の影響が競馬にどの程度及ぶのかを生産者は懸念しており、もっと言えば、今年の市場がどうなるのかが最大の関心事でもある。それを占う重要な指針となるのが、このJRAブリーズアップセールということになる。

JRA育成馬展示会展示

JRA育成馬展示会展示

JRA育成馬展示会展示

 比較展示の後、1600mダートコースで騎乗供覧が実施された。

 62頭中、52頭が3班に分かれて馬場入りし、2頭ずつの併走である。JRA育成馬は、ことさらタイムを詰めることはせずに、ハロン13秒〜14秒くらいでコースを駆け抜ける。走法やバランス重視で、この辺は他の2歳トレーニングセールと明らかに一線を画している。

研修生騎乗

 今回の騎乗供覧には、JRA職員に混じって、BTC育成調教技術者養成研修課程にて昨春より訓練を重ねてきた28期生も参加した。

研修生騎乗

 内側に研修生、外側にJRA職員という組み合わせがほとんどだったが、中には、2頭がいずれも研修生という組もあり、彼らのこの1年間の成長がうかがえた。

 なお、育成調教技術者養成研修制度はこの翌日(12日)、新たに29期生を迎え開講式が行われた。来週、その開講式と15日に予定されている28期生修了式の模様をお伝えするつもりである。

 ところで、現3歳世代のJRAブリーズアップセール出身馬は、昨年売却された73頭中72頭が中央に登録され、そのうち4月10日現在で68頭が出走している。出走率94.4%である。

 勝馬は12頭。交流競走を含め14勝をマークしており、出世頭は、展示会前々日に阪神で行われた「ニュージーランドトロフィー=GII」を12番人気で制したエイシンオスマンである。父ロックオブジブラルタル、母ゲルニカ(母の父Luhuk)という血統で生産は安平町の(有)ノーザンレーシング(飼養管理・ノーザンファーム)。

 この馬は、2009年「セレクトセール=1歳」にてJRAが1050万円で購買し、翌年の2010年ブリーズアップセールにて最高価格の3150万円で平井豊光氏に落札された。

 平均価格が2000万円を超えていた2009年のセレクトセールで、1050万円はむしろ安い部類に属するが、同馬の母ゲルニカはアルゼンチンの古牝馬チャンピオンで、GI4つを含め6勝を挙げている名牝である。

 3150万円はかなりの高額馬だが、評価の高さを今回見事に実証する形となった。そして、何よりホッとしたのはJRAブリーズアップセール関係者であろう。父ロックオブジブラルタルは2007年の1シーズン限定ながらJBBA種馬場で供用された種牡馬で、面目を保ったとも言えよう。

 さて、こうしたことが“追い風"になってくれるかどうか。前述のように、何せ今回は大震災後の「初めての市場」で、どんな売れ行きとなるものか全く予測がつかない。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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