2011年05月18日(水) 18:00
5月11日(水)。今年度のJRA競馬学校厩務員課程秋期生徒募集にともなう一次試験が、新ひだか町静内で実施された。東京・馬事公苑と栗東トレーニングセンターも会場になっており、全国で三箇所である。
今回募集されたのは、2011年度10月入学生及び2012年度1月生。募集人員は各15名以内とされている。
JRA厩務員は、ここ数年志願者が減少傾向にあり、従来と比較すると「やや広き門」になっているとも伝えられるが、それでも志願者は三会場合わせて200名弱に達した。
そのうち静内会場に集まったのは36名(1名欠席)。大半は胆振や日高の育成牧場で騎乗者として働く若者である。
応募には牧場経験と乗馬経験が合計2年以上必要で、そのうち育成馬の騎乗経験が1年以上なければならない。学歴は「中学校卒業以上の学歴またはこれと同等の学力を有する」とあるので、これはほとんどの場合問題ない。
ただし、年齢制限がある。今回の試験は、10月生の場合、昭和58年(1983年)10月2日以降に生まれていること。また24年1月生は昭和59年(1984年)1月2日以降に生まれていること、とある。満年齢でいうと、27歳が受験資格ギリギリの上限なのである。
一次試験はまず体重測定から始まった。全員が受験番号順に並び、体重計に乗る。現在は「概ね60キログラム」となっているが、数年前までは厳格に「60キロ未満」であったという。小柄な若者ならばそれほど苦労しないが、身長の高い受験生は大変だ。体重測定の結果、60.1キロで一次の筆記試験を受験することすらできないままその場で帰された例もあったらしい。
今回も、体重をできるだけ軽くしようと計測の前に下着一枚になる受験生が何人かいた。概して175センチを超えるような身長があると減量に苦労させられる。その反面、比較的小柄な若者は着衣のまま平然と体重計に乗っていて、対称的な光景であった。
体重を量った後は握力測定となる。これも同じく受験番号順に並び、左右両方の握力を測定する。その際、競馬学校から来ている教官より「測定の際には握力計を体から離して握るように」と注意を受けていた。体に密着させて握るのと離して握るのとでは測定値が変わるのであろうか。
最後に柔軟性をチェックする検査が行われた。これは、5人1組になり、まず靴を脱いで横一列に並んで直立する。次に両腕を前にまっすぐ伸ばし、かかとをつけた状態で屈む。そして立つ。これらを数回繰り返すのである。
ここまでの段階ではほとんど大きな差が見られなかった。体重は60キロを超えている受験生が数人いたものの、大半は50キロ台を維持しているし、握力は概ね40キロ台。腕を伸ばしての屈伸も問題なくできていた。
しかし、一次試験は筆記である。30分の休憩を挟んで午後1時半より筆記試験が始まった。所要時間は90分。一般教養(漢字読み書きと社会)馬学及び競馬知識などが出題される。
もちろん試験中は会場内に入れないので、後日受験した若者に個別取材するしかなかったのだが、今回はとても難しかった、と答える受験生が多かった。
漢字の書き取りでは「鐙(あぶみ)」「手綱(たづな)」などの道具に関する問題が出たらしい。またJRA施設やWIN5、今年度のJRAのCMに関する問題なども出題されたという。
3月のドバイワールドカップや昨年度のJRA賞受賞馬に関する問題があるかと思えば、社会問題として裁判員制度や世界遺産に関する問題もあったりと、なかなか幅広い出題だったらしい。
まずこの一次試験で200名弱から約半数がふるいにかけられる。二次試験は乗馬技術を試す実技試験が実施され、それにパスすると、最終面接へと進むことになる。
静内会場の36名中、10名くらいはBTCで見たことのある若者であった。春と秋の年2回とはいえ、ベテラン?になるともう10回目の受験になるという。しかし、前述のように満27歳が上限であるため、後がない受験生もいる。
また、首尾よく厩務員課程に入学できたとしても、今は卒業後に必ず就職できる保証がない。「財団法人・日本調教師会に所属する調教師に採用された場合に限り、中央競馬の厩務員となることができる」と明記されており、現に競馬学校を卒業してから採用待ちの待機組も少なくない。
そうした現状からか、受験生はこのところ減少傾向にあって、静内会場でも「一頃から比較すると半減くらいではないか」と口にする若者もいた。
それでも、厩務員になりたい若者は依然として多い。1回や2回どころか、4回目、5回目の受験生は珍しくなく、あくまで厩務員志望の若者は年齢上限ギリギリまで何度もチャレンジを続けることとなる。めげない精神力を維持するのは並大抵なことではない、と彼らを見ていて感じた。
一次試験の結果は今月下旬に本人宛に郵送で送られる。
※次回の当コラムの更新は5/26(木)となります。予めご了承願います。
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田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。