HBAトレーニングセール

2011年05月26日(木) 18:00

 北海道市場のトップを切って5月24日、25日の両日にわたり、2歳トレーニングセール(主催・HBA日高軽種馬農協)が札幌競馬場を会場に開催された。

 北海道は、ついこの間桜が開花し、花見を楽しんだばかり。太陽光線は眩しいが、日陰に入ると涼しいというよりも“寒い”。幸い、市場開催中は天候に恵まれ、雨にたたられた昨年のようなことはなかったものの、来場者はおおむね厚着の冬モードであった。

 今回は上場申し込みが多くなり、過密スケジュールとなるのを避けて2日間の日程が組まれた。

 上場馬は22日(日)に入厩しており、23日(月)が下見である。後述するが、2日間のうちの2日目(25日)に上場予定の2歳馬も同じく22日に集合しており、滞在は3泊4日に及ぶ。「日程は今更どうしようもないけど、ちょっと疲れる」と漏らす育成牧場スタッフもいた。

 名簿上では、初日が1番から151番まで。そして2日目が152番から228番まで、である。それにJRAブリーズアップセールから回ってきた5頭が別冊子の名簿に追加されている。

 初日。午前9時から公開調教が始まった。晴れているものの、日が差さないスタンドに座っているとガタガタ震えるくらいの気温。おそらく7度か8度程度だったのではなかろうか。

スタンド風景

 公開調教は3つのグループに分かれ、それぞれ併走が基本である。残り2ハロンから計時が始まり、1ハロンずつのタイムが表示される。

 多くが11秒台を出していたが、稀に10秒台が出て、購買者は熱心に調教を見ながら候補を絞る。同じ11秒でも、一杯に追われるか余裕を残しているのかを丹念にチェックするのだ。

 1グループが終わるとハロー掛けが入り、しばし休憩時間である。その間に、豚汁やコーヒーなどの熱くて体の温まるものが人気であった。

 初日の公開調教は77組。単走での調教もあり、ずいぶん時間がかかった印象だ。全てが終了したのは正午である。

 せり開始は午後1時。初日は名簿上では151頭が上場予定だったが、10頭が欠場し141頭がせりにかけられた。

 午前中の調教シーンがVTRで再現され、走破タイムが発表される中、せりとなる。

 どの市場でもそうだが、この2歳トレーニングセールでも、やはり購買者の注目する上場馬は限られており、上下の価格差がいっそう目立った。

 100万円台、200万円台で落札される馬も多く、販売者(生産牧場の場合もあれば育成牧場の場合もある)にとってはなかなか厳しい市場であった。

 初日は141頭が上場され、88頭が落札された。売却率62.41%。売り上げ総額は4億6515万円(税込み)。平均価格は528万5795万円。

 初日の最高価格は146番「トミケンクラウン09」(牡栗毛、父ハーツクライ、母トミケンクラウン=ジェネラス)の2730万円で、ノーザンファームが購買。生産は新ひだか町の田原橋本牧場で販売申し込み者は吉澤ステーブル。この馬は公開調教で残り1ハロンを10秒60でまとめ、これが最も速い時計であった。

上場番号146番・調教

上場番号146番・立ち写真

 牝馬では67番「アグネスキフジン2009」(芦毛、父クロフネ、母アグネスキフジン=サンデーサイレンス)の1585万5千円。生産、販売申し込みともに日高大洋牧場。

上場番号67番

 さて2日目。前日に購買を済ませた人が少なくなかったと見え、初日と比較すると明らかに購買者の数が少ない。上場予定頭数もほぼ半分になっており、やや低調ムードが漂っていた。

 2日目も初日同様に午前9時より公開調教が開始されたが、頭数が少ないため11時前には終了。せりは1時間早まって12時より開始された。

 初日には小刻みにせり上がる上場馬が結構いたのだが、2日目になると取引はやや単調になり、どんどん進んだ。

 終了は午後2時過ぎ。2時間強で74頭がせりにかけられ、45頭が落札。総額1億9824万円を売り上げ、平均価格は440万5333円。売却率は60.81%。

 この日の最高価格馬は191番「キャッツプライド09」(牝鹿毛、父ゼンノロブロイ、母キャッツプライド=ヘネシー)の1575万円。生産は社台ファーム。販売申し込みは吉澤ステーブル。落札は窪田康志氏。

上場番号191番

 なお今回の市場を通じてお台付け価格が最も高かったのは220番「Checkered Flag09」(牡鹿毛、父Distorted Humor、母Checkered Flag=A.P.Indy)の4000万円だったが、残念ながら主取りであった。

上場番号220番


 2日間を通じて215頭(前年比36頭増)が上場され、133頭(前年比33頭増)が落札された。売り上げ総額は6億6339万円とこちらも前年より約7000万円の増加だが、その代わり平均価格は498万7895円と、昨年の592万8300円から約100万円下落した。

 牡馬の売却率が58.14%だったのに対して牝馬が67.44%と健闘したのは意外な感があるものの、それだけ低予算の購買者が多かったとも言える。

 また、2日間にわたる開催では、どうしても初日と2日目の結果にばらつきが出てしまい、販売申し込み者からは「初日に公開調教、2日目せりという日程で開催できなかったのか」といった声も出ていた。

 2歳馬トレーニングセールは事実上のラストチャンス。ここでどうしても売らなければならない事情を抱えた上場馬が多く、そこを見透かされてしまうと価格は上がらない。

 思いの他、売却率が高かったのはまだ一定数の需要があるということだが、反面、予想していたように価格はかなり厳しい数字であった。

 7月より始まる今年の1歳馬市場がどんな展開となるか、ひじょうに気になるところだ。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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