エプソム競馬場で行われる注目の3レース

2011年06月01日(水) 12:00

 今週末は英国のエプソムの12F10Yを舞台に、絶対に見逃せない3レースが行われる。

 まずは3日(金曜日)に行われる古馬によるG1コロネーションC。ブックメーカー各社が軒並み単勝2倍を切る本命に推しているのが、エイダン・オブライエン厩舎のセントニコラスアベイ(牡4、父モンジュー)である。

 2歳時、G1レイシングポストトロフィーを含めて3戦3勝の成績を残して欧州2歳チャンピオンの座に就いた同馬。圧倒的なレース振りや、距離が延びてなおよさそうな血統背景から、2000ギニーは言うに及ばず3、冠の期待をかけられたのが3歳シーズンを前にしたセントニコラスアベイだった。

 ところが、3歳初戦の2000ギニーで6着という思わぬ大敗を喫すると、戦いの前線から撤退し、復帰の噂は幾度か流れたものの、結局その後1度もファンの前に姿を見せることなく3歳シーズンを終えている。

 迎えた今季、11か月振りの実戦となった4月3日のLRアレッジドSでは3着に敗れたものの、5月6日にチェスターで行なわれたG3オーモンドS(13F89Y)では、重賞2勝馬アライドパワースに9馬身という圧倒的な差をつける大勝。2歳10月のレイシングポストトロフィー以来およそ1年半ぶりに勝利の美酒を味わった。

 2歳時の評価が正当なものであったのかどうか、セントニコラスアベイにとって試金石になるのがこのレースで、仮に良い勝ち方をすれば、キングジョ−ジや凱旋門賞の有力候補として遇されることになろう。

 そのセントニコラスアベイに、ひと泡吹かそうと手ぐすねをひいているのが、今季も現役に残ったミッデイ(牝5、父オアシスドリーム)である。3歳時のBCフィリー&メアターフ、4歳時のヴェルメイユ賞など、すでにG15勝を挙げ「牝馬の時代」の一角を担っている同馬。今季初戦となった5月12日のG2ミドルトンSも2馬身差で快勝し、絶好の状態で自身初の牡馬混合重賞に挑む。

 今季初戦のリポンの条件戦を11馬身差で圧勝したのち、ニューマーケットのG2ジョッキークラブSを連勝して初重賞を手にしたダンディーノ(牡4、父ダンシリ)にも、得意としている固い馬場コンディションになりそうなだけに、一角崩しの可能性がありそうだ。

 同じ3日(金曜日)に行われる牝馬の祭典G1オークスは、1000ギニーに続く2冠を目指すブルーバンティング(牝3、父ダイナフォーマー)が主役だ。

 2歳時、ニューマーケットのLRモンロゼ・フィリーズS(8F)という、翌年のオークスへ向けた登竜門と言われるレースに勝っている同馬。昨年G1フィリーズマイルを含めて4戦4勝の成績を残し、ゴドルフィンの1000ギニー候補と目されていたホワイトムーンストーンが、直前になって故障で戦線を離脱したため、急遽ゴドルフィンのファーストカラーを背負って出走した1000ギニーで、関係者すら驚く快走を見せた。血統的にも距離延長に不安はなく、ブックメーカー各社は単勝3倍前後のオッズを掲げて本命に推している。

 これに次ぐ存在は、エイダン・オブライエン厩舎のワンダーオヴワンダース(牝3、父キングマンボ)だ。母オールトゥビューティフルがオークス2着馬で、祖母が凱旋門賞馬アーバンシー。おじにシーザスターズやガリレオがいるという超良血馬で、早くからオークスのアンティポストに顔をのぞかせていた馬である。初勝利を挙げたのが4月28日にティッペラリーで行なわれたデビュー3戦目のメイドンと、軌道に乗るまでいささか時間を要したが、連闘で挑んだチェスターのJRチェシェアオークス(11F79Y)を2.3/4馬身差で快勝。素質開花となれば一気に頂点まで突き抜ける可能性がある馬として、ブックメーカー各社は4.5倍から5倍のオッズで2番人気に支持している。

 オッズ6〜7倍で3〜4番人気につけているのが、1000ギニーではいずれも不覚をとった2頭だ。

 1000ギニーでは3番人気を裏切り6着だったハヴァント(牝3、父ホーリング)もブルーバンティング同様に、兄に2400mのG1ミラノ大賞勝ち馬リーダーシップがいるという血統から、もともとオークス向きと見られていた馬である。距離延長は大歓迎だが、一方で、管理するマイケル・スタウト師が1000ギニーの敗因に挙げた「馬場」が、依然として固めなのは気懸かりである。

 1000ギニーでは4番人気で11着と期待を裏切ったものの、その後5月22日の愛1000ギニーで事に名誉挽回を果たしたのが、昨年のカルティエ賞2歳牝馬チャンピオンのミスティーフォーミー(牝3、父ガリレオ)だ。父ガリレオは距離延長に問題ないものの、叔父に欧州2歳チャンピオン・ファスリエフがいる牝系はスピード偏重だけに、エプソムの12F克服がカギとなるはずだ。

 そして、5日(土曜日)に行われるのが、ダービーである。

 前々回のこのコラムでもご紹介したように、話題の中心は女王陛下の所有馬カールトンハウス(牡3、父ストリートクライ)だ。最重要プレップのG2ダンテSを制してダービー本命の座に躍り出た同馬は、5月25日にニューマーケットで行なわれた7Fの追い切りでも絶好の動きを披露。ブックメーカー各社は目下、2倍から2.5倍のオッズを掲げている。

 ここ1週の間に急激に買い進まれたのが、フランスから遠征してくるプルモワ(牡3、父モンジュー)の単勝だ。5月7日にサンクルーで行なわれたG2グレフュール賞を制した後、管理するアンドレ・ファーブル師がエプソム参戦を表明した同馬。5月26日に最終追い切りを消化して順調なことが確認され、ファーブル師も1976年のエンペリー以来となる仏国調教馬による英ダービー制覇に自信を見せたことで、2番人気の座(オッズ5倍から5.5倍)を確保することになった。

 これに続くのが、エイダン・オブライエン勢の2頭だ。

 ダンテSではカールトンハウスに1.1/2馬身及ばぬ2着だったセヴィル(牡3、父ガリレオ)は、2歳秋にG1レイシングポストトロフィーで2着になった時から、ダービー候補の一角に名前が挙がっていた馬である。父だけでなく、ドーヴィルの2500mのG3ミネルヴ賞やシャンティの2400mのG3ロワイヤモン賞を制している母シルヴァースカヤからも、スタミナを受け継いでいる。

 G1ガネー賞勝ち馬コレカミノの全弟で、09年のドーヴィル・イヤリングセールで2番目の高値となる75万ユーロで購買されたのがリサイタル(牡3、父モンジュー)だ。もともとの期待馬が、G2愛ダービートライアルSを制したとあれば、人気となるのも当然なのだが、問題はその愛ダービートライアルSの勝ち方だ。直線で抜け出して1頭になると、頭を上げ気味にしてラチにもたれる仕草を繰り返した同馬。3着に敗れた今季初戦のG3バリーサックスSでも、前半行きたがって折り合いを欠く場面を見せていただけに、いかにしてレースをスムーズに運ぶかがポイントとなりそうだ。

 なおダービーの模様は、レース翌日の5日(日曜日)に、JRA各競馬場とウインズ、グリーンチャンネルなどで放映予定なので、ぜひ御覧いただきたい。

▼ 合田直弘氏の最新情報は、合田直弘Official Blog『International Racegoers' Club』でも展開中です。是非、ご覧ください。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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