2011年06月08日(水) 18:00
今週月曜日より、地方競馬では「ダービーウィーク」が始まっている。
6月6日は佐賀、そして7日(火)には門別競馬場で道営ホッカイドウ競馬のダービー「北海優駿」が晴れ渡った夜空の下、予定通り行われた。
今年は14頭がエントリーしてきたものの、直前にハピネスハンターが取り消して13頭によって争われ、直線抜け出したピエールタイガーとスタープロフィットがゴール前まで熾烈なマッチレースを展開し、ほぼ同着でゴールイン。場内に映し出される大型ビジョンでゴール前のシーンが再生されたが、どちらが勝ったのかまったく分からないほどの微妙な着差となり、長い間写真判定が行われた。
ほんの僅かの差でこのレースを制したのはピエールタイガーである。父カコイーシーズ、母ビーフレグラント(母の父ダイタクヘリオス)という血統の牡の鹿毛馬。騎乗の宮崎光行騎手と所属の堂山芳則厩舎はともに、同レース史上初の三連覇を達成した。生産は船越牧場。馬主は工藤栄三氏。
このレースは社団法人JBC協会賞として、ダーレー・ジャパン株式会社より、ディープスカイの来年度の配合権利が副賞として贈られた。
レース後、三連覇となった宮崎騎手は、淡々とレースを振り返りながら「昨年と一昨年は人気馬に乗せてもらってたんで、結構なプレッシャーがありましたけど、今年はそれほど人気のない馬だったから、割に気楽な気分で乗れました。本当はもう少し評価が高くなるかとも思ってたんですがね。5番人気でしたから。三連覇ですか? 北海優駿では史上初? そうらしいですね。まあ、いい馬に乗せていただいてますから。
今回、ゴール前はちょっと勝てたかどうか分からなかったです。スタープロフィットがじわじわ迫っているのが視界に入ってきて、最後はまったく並んだし、交わされたかも知れないとも思いました。向こうの方がちょっとだけ脚色(あしいろ)が良かったですからね。同着でもいいかな? とも一瞬思ったんですけど、勝てて本当に良かった」と笑顔を見せた。
この日の門別競馬場は日中から良い天候に恵まれ、絶好のナイター日和となった。昼間は汗ばむほどの陽気だったが、太陽が落ちると上着がほしくなる程度に気温も下がり、暑くもなく寒くもない爽やかな気候。
平日開催とあって、入場者は昨年とほぼ同じ647人とやや寂しい数字だが、これはやむを得ないところか。生産地は交配シーズン最後の追い込みの時期でもあるし、早いところでは一番牧草を始めている牧場もある。生産地だからといって「ダービーディの今日は特別な日」というほどの意識は残念ながら持たれていない。私事ながら、何人かの生産者に声をかけて門別遠征を誘ってみたものの、さすがに浦河からは遠く、誰も同行するとは言わなかった。
なお、1日の売り上げはこちらも昨年とほとんど変わらず、1億8644万6300円。ただし、経済状況など考えたらむしろ健闘していると評価すべきかも知れない。
ダービーウィークとは言いながら、各地の地方競馬で開催される「ご当地ダービー」への一般ファンの関心はどの程度のものなのだろうか。
せめて(これは現状では無理かも知れないとはいえ)「ダービーウィーク6重勝馬券」でも発売されたら、結構な人気が出るとも思うのだが…。
8日(水)は大井で「東京ダービー」、9日「兵庫ダービー」(園田)、10日「東海ダービー」(名古屋)、13日「岩手ダービー・ダイヤモンドカップ」がこれから行われる予定である。
北海優駿の出走メンバーを改めて見てみると、昨年もそうだったが、血統がひじょうにバラエティに富んでおり面白い。前述したように、優勝馬ピエールタイガーはカコイーシーズ産駒だし、その他の出走馬も、ブラックタキシード、スターリングローズ、タップダンスシチー、グラスワンダー、マーベラスサンデー、オンファイア、ゴールドヘイローなどという名前が父馬欄に並ぶ。
優秀な母系にサンデー系種牡馬というような配合でなければ、今や中央ではダービーに出走すること自体が極めて困難な時代になってしまっているが、皮肉なことに、こうした地方競馬の方がかえってよほど様々な血統背景を持つ出走馬がずっと多い。願わくば、せめてこの中から怪物級の逸材が生まれてくると面白くなるのだが…。
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田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。