競馬道楽

2011年06月09日(木) 12:00

 たまには大胆なことを言ってみたくなるものだ。どうせやるなら「競馬道楽」なる心境に到達してみたらどうだろう。とにかく、心底から競馬を楽しむとはどういうことなのか。風流にと考えたら、競馬の持つ風情にひたり、その雰囲気を楽しむこと、そんな感じがする。その場にいることを大切にするのだ。

 そこに居合わす人たちと打ち解け、交わす話にひたるという大らかさ、それがなければ無理だ。道楽の「楽」は、ここに至って初めて一人前であり、「競馬の通」といえる。

 この通といえば、「食通」なる言い方が頭に浮かぶ。かの北大路魯山人は、食通とは美と味の調和を楽しむものと述べている。

 この場合、それには耳から、目から、鼻からと様々な感覚を動員しなければならない。

 食だからと言って味にばかりとらわれ、その背後にある美の影響力に無頓着なのはよくないと言い切っている。つまりは、料理にある風情を大切にする、食通とはこのようなものであると。

 これを競馬に引用するとこうなる。競馬だからと言って、勝ち負けや配当金にばかり気を奪われるのはよくない。いくらつくから面白いとか、それしかつかないから面白くないとか、これでは競馬通とは言えない。

 また、まるで予想合戦さながらに、誰がどんな予想をしていたとか、競馬の持つ風情そっちのけで、勝負の行方やレース予想に明け暮れる姿からは、競馬の上等な雰囲気は伝わってこない。

 料理に、色どり、盛り方、取り合せ、食材の良否といった美意識があるように、競馬にだって、上品な美意識があっていい。競馬のどこにそれを見つけるか。「競馬道楽」の「競馬通」として、胸を張っていけるようになるには、ここで少し立ち止まってみなければならない。競馬への志を高くもって味わい、そして人間を高めていくべきだろう。

 是非とも、自分の周囲の者たちに競馬への憧れを抱いてもらえるように、いい風を送りたい。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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