念ずれば花ひらく

2011年06月16日(木) 12:00

 窮したときに発することば、心に念じることばある。行きづまったときにとなえるのだ。どれだけ、心の支えになっているか。この念じるということ、これは、詩人の坂村真民さんの書かれたものに出会ってから、ずっと自分の習慣になってきた。

 36歳で未亡人になった坂村さんの母親は、5人の幼子をかかえ多事多難な一生を送られたが、そうした中いつも口にしていたのが「念ずれば花ひらく」ということばで、この母の一途一念を身につけ、書く詩の骨髄として励んでこられたのだ。

 念ずるという行為は、人の生活のどこかで生き続けているのではないか。心に念じ、仏の名号や経文を唱える、そこまでいく場合もあるのだが、どこの競馬場にも必ずある仏像、馬頭観音をお参りしたことがあるだろうか。正式には、馬頭観世音菩薩ではないかと思うのだが、競馬開催の前には、関係者は無事故を祈っている。

 仏像には、如来、菩薩、明王などの姿があるが、この中で、悟りを求めて修行しながら衆生の救済に専念するのが菩薩なのだそうで、その菩薩の中でも最もよく知られているのが観音菩薩ではないかと思う。この観音菩薩は耳が優れていて、人々が苦しみから発する「南無観世音菩薩」の声をいち早く聞きつけて苦しみを取り除きに来てくれるそうだ。

 この観音菩薩は、人のかかえる問題に応じてその姿を自在に変え、素早く対応してくれる。

 そのひとつが、畜生道に苦しむ人々を救ってくれる馬頭観音で、いつも馬の好物のニンジンが供えられていて素朴な信仰心がずっと息づいているのがわかる。

 さてこの観音様には現世利益があると聞いたことがある。生きている今の願いを聞いてくれるのだから、有難い仏様なのだ。競馬場と現世利益、ちょっと不謹慎なにおいがする。「念ずれば花ひらく」の一途な一念、決して粗末にはしていません。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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