社台TC、サンデーTC見学ツアー

2011年06月22日(水) 18:00

 北海道の6月は1年中で最も過ごしやすい季節を迎える。毎年この時期に、いくつかのクラブ法人が募集馬ツアーを実施しており、先週土日は社台グループで「社台TC、サンデーTC」合同の見学ツアーが行われた。

 18日午前9時半。新千歳空港のANA到着ロビーには、このツアーに参加する450人もの人々が集合し、旅行社やクラブ職員たちが一人ずつ確認に走り回る。人数が多いのでこれだけでも大変な作業だ。

 ようやく全員が揃ったところでバス13台に分乗しての出発となった。天候は曇り。まず向かったのは社台ファームである。

 歓迎昼食会から日程がスタートした。この時期の北海道では野外バーベキューがお似合いで、ここでまずステーキ、アスパラ、メロン、玉蜀黍などを賞味してもらおうというのだ。
 参加者は大半が本州からきており、この昼食会はとても好評なのだという。さっそくアルコール類で喉を潤す人も多かった。

 初日のこの日は、社台ファームの各厩舎と追分ファームを巡回しての見学である。
 1歳の募集馬のみならず、2歳以上の現役馬もいて、昼食後、すぐ隣の場所にエリンコートやマルセリーナなどが厩舎から出てきて展示されたのには驚いた。

エリンコート

 もちろん、このツアーの目的は1歳募集馬の見学である。きれいに刈り込まれた放牧地で1歳馬たちがすでに会員を待っている。

 この日のために仮設パドックが作られ、周囲には椅子が並べられている。常時4頭〜5頭が周回しており、順に馬名や血統、セールスポイントなどが紹介されて行く。1頭が出て行くとまた次の1頭が入る、という方式でまず牡馬39頭がここで披露された。

社台ファーム展示風景仮設パドック

 このパドックで紹介された1歳馬たちは、それぞれ所定の位置に移動し、展示される。おそらく相当量のリハーサルを繰り返したのだろうとは思うが、いくら夜間放牧明けとはいえ、どの馬も大人しく従順なのには感心させられた。

 会員たちは展示されている1歳馬に近づき、スタッフにどんな馬なのかを質問したり、顔や肩などを撫でたりしていた。どの馬も嫌がる素振りは見せず、至って大人しい。それだけ人の手がかけられているということなのだろう。

社台ファーム展示風景

 展示時間は明確に決められており、移動はすべてバスである。この日は追分ファームにて1歳馬の牡牝、2歳以上の休養馬など見学してから、最後に追分ファームリリーバレー(新しく作られた調教施設)をバスで一巡して終わった。

 夜は苫小牧市内のホテルにて歓迎夕食会が開催され、吉田照哉氏、勝己氏、晴哉氏も会場に姿を見せた。社台グループにとっても、このツアーがセレクトセールと並ぶ一大イベントであることを強く印象付けられた。

吉田3兄弟

 2日目は7時半の出発である。この日はノーザンファーム各牧場にて1歳牡牝の募集馬を見学した。

 この日も基本的な流れは前日と同様で、放牧地内に円形のパドックがが用意されており、それを参加者が取り囲むようにして並び、1頭ずつ紹介されるという形式だ。常時4頭が周回しており、1頭が出て行くと次の1頭が輪に加わる。

 前日もそうだったが、このノーザンファームの1歳馬たちもかなりアベレージの高い「選ばれた1歳馬」たちで、オルフェーブルの全弟もいる。バレークイーン、ロゼカラーなど枚挙にいとまがないくらいの名牝たちの産駒が続々と登場した。

ロゼカラー2010

 昼食はノーザンホースパーク。空港にほど近いこの施設は毎年7月にセレクトセールが開催されることでも知られるが、前日はうって変わって汗ばむほどの陽気となったこの日は、多くの観光客で賑わっていた。

 午後は2歳以上の現役馬たちや社台スタリオンにて種牡馬展示などの日程も組まれていた。社台スタリオンの種牡馬展示会は毎年2月にここで行われるが、6月の展示会は初めて見た。改めてここで繋養されている種牡馬のラインナップはまさしく圧巻だ。

社台スタリオン展示マンハッタンカフェ

 合計して2日間で約500頭もの馬を見て歩いたことになる。まさに馬三昧の濃密なツアーという他なく、しかも内容が濃い。

 社台TC、サンデーTCともに募集馬は40口に分割されており、1口あたりの価格は25万円〜250万円ほどの開きがある。250万円というと日高では1歳馬を丸ごと購入できる価格だが、たとえ他の39人との“共有”であっても、このツアーで夢を買う人々がいかに多いのかを見せ付けられた気がする。

 今回のツアーは前週に続いて今年2回目だという。またこれとは別に「日帰りツアー」も2回実施されており、これらを合わせると1000人以上が参加したことになるだろう。それでもツアー人気は高く、私は今回会員である友人の配慮によって同伴者として参加したのだが、申し込みが殺到し、毎回キャンセル待ちが出るほどらしい。

 このツアーはなかなか真似をしようと思ってもできることではないのだが、手入れの行き届いた牧場で会員を迎え、よく整備された場所に馬を立たせ展示すると、馬はよりいっそう輝いて見える。スタッフの教育も徹底しており、当たり前のことだが、曳き馬の際にも手綱を肩にかけたまま俯いて歩くような人間は一人もいなかった。また展示の際にも、暴れたり立ち上がったりする馬も見かけなかった。

 何より、この募集馬の中に、おそらく複数の未来のGI馬がいるであろうと思われ、それが人気の秘訣なのだろう。日高の人間から見ればタメ息の出るような募集馬ラインナップと言う他なく、改めて社台グループの底力を見せ付けられたような気がする。

デルタブルースお見送り

 なお、ノーザンホースパークにてツアー最後のお見送りは、何とデルタブルースであった。デルタブルースはここで競技馬として第二の人生ならぬ“馬生”を送っており、バスの間近までやってきて参加者を喜ばせていた。
これもまた憎いばかりの演出である。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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