ラフィアン募集馬展示会

2011年06月29日(水) 18:00

 社台TC、サンデーTCに続き、先週6月25日と26日は、ラフィアンターフマンクラブの1歳馬募集ツアーが実施された。

 2日間とも好天に恵まれ、気温湿度ともに低く、半袖ではいささか辛いくらいの気候。爽やかな北海道の6月らしい絶好のコンディションとなった。

 バス4台のほか、各々レンタカーや自家用車などで1歳馬展示会の行われる新冠町明和のビッグレッドファームに集まったのは午後1時前。学校体育館ほどの大きさがある屋内馬場にウッドチップが敷きつめてあり、そこにコの字型に仮設観覧席が設けてある。会員はそこに腰掛けて1頭ずつの解説(岡田紘和社長が担当)を参考にしながら出資馬を吟味するのである。

展示風景

 今年の募集馬は全部で51頭。内訳はビッグレッドファーム生産馬24頭、コスモビューファーム11頭、他牧場生産馬16頭となっている。

 午後1時より個体展示が始まった。カタログ番号順に1歳馬が中に曳かれて入る。そこで岡田紘和社長がセールストークを展開し、スタッフはその間、馬を曳き周回したり立たせたりする。

「選ばれた1歳馬たち」ではありながら、ここで会員を前にその場でリストから外される馬も出てきた。

 成長過程でやや問題が生じた1歳馬を、思い切って募集リストから除外するのはかなり苦衷の判断だとは思うが、結果的に走る可能性が低くなるのならばそれもまたやむを得ないのであろう。

 個体展示は予定通り進行し、この分では繁幸氏の“出番”はないのだろうかと思っていた矢先、32番の「ロストインラブの10」(牡黒鹿毛、父ダンスインザダーク、、新冠・ハシモトファーム生産)が登場すると「この馬だけはちょっと私に言わせてほしい」とマイクを握り、さっそく身振り手振りを交えてのセールストークがはじまった。

岡田繁幸氏

 会員たちには「毎度お馴染みの光景」なのだろうが、この人の熱弁はやはり不可欠である。こうして、一生懸命に募集馬の良い部分を分かりやすく解説し、確信を込めて「これは走るはず」と太鼓判を押されると、会員たちの心は動くのである。

 もう1頭の総帥の推奨馬は一番最後に登場した51番「レッドチリペッパーの10」(牝栗毛、父ネオユニヴァース、社台ファーム生産)で、会場前に馬を立たせては何度か常歩で往復されながら熱烈トークを展開した。

レッドチリペッパーの10

 個体展示が終わった後、敷地内の種馬場に移動し、アグネスデジタルやマイネルラヴ、メジロベイリーなどの展示が行われた。

 2月の種牡馬展示会でもそうだったが、繁幸氏は昨年より供用を始めているコンデュイットに、殊のほか期待をかけている。最後にコンデュイットが登場すると、馬の近くまで進み出て、いかにこの種牡馬がすばらしいものを持っているかについて語り始めた。

 1歳馬の個体展示のときとは変わり、繁幸氏は頭部にインカムを装着して登場したので両手は自由に動く。周囲を取り囲む会員たちに向かって、熱弁を繰り広げる繁幸氏の存在は、まだまだラフィアンの顔なのである。

コンデュイット

 2日目の午前中は会場を真歌トレーニングパークに変えて公開調教が行われた。昨年の募集時に会員たちが一口持った愛馬の調教をここで実際に見て、デビューする日を待ち望む。

公開調教の様子

マイネルレーサーの公開調教

 近年、社台系クラブ以外は、どこであれ苦戦を強いられていると伝えられる。だが「成績だけのことを言われたら、社台系と比較すれば見劣りするのはたしか。でも、私はずっとラフィアン一筋でやってきましたし、浮気はするつもりはありません」と話す会員もいた。

 ラフィアンの場合は、岡田繁幸氏の類い稀なカリスマ性に支えられている部分が大きい。どんな形であれ、クラブとしての個性、特徴をいかに前面に押し出せるかがポイントである。

 まだわが国には多くのクラブ法人がひしめいており、それぞれしのぎを削っている。競走成績がすべて、と言われてしまってはどうしようもないのだが、それを補うだけのきめ細かなサービスや「そこで馬を一口持つ喜び」をいかに作り出し、演出できるかが勝負の分かれ道となるはずだ。

 どのクラブ法人も、いよいよ今年から募集馬に対する補償制度がなくなり、それに代わる新たな還元方法を考案している。ラフィアンもまた「マイレージ制度」なるものをスタートさせることになっており、会員減に歯止めをかけようと必死である。

 クラブ会報発行、優勝馬の口取り写真への参加、懇親会パーティー、競走馬名の募集などはいまや大半のクラブが実施しており、こういったもの以外の“売り”を考えて行かねばなるまい。その意味でも、ますます競争が激化してきているとは言えよう。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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