気持の切り換えを素早くすること

2011年07月07日(木) 12:00

 度外れて自尊心の強い人間がいたとする。何でも自分が一番と思いたいから、いつも過剰な自信にあふれている。ところが、ひと度蹉くと意外に脆いものだ。

 この自己過信と自己卑下との落差が大きいところが、厄介で悩ましい。

 しかし、よくよく胸に手をあててみると、これはまさしく自分のことでもあると感じられるのではないか。傷つきやすく、心が激しく揺れ動くのが通常の人間だから、よく意識しておくべきことで、どうやって中庸の精神を培っていくかだろう。

 競馬は、決断を突きつけられる場面が多いので、自信は必要だ。競馬で確信を持つケースは少ないが、自分の意思をはっきり決めないことには、前に進めない。自己過信かもしれないが、そうでなければ決断は下せない。

 ただ、競馬に関しては、自信にあふれるという気分は、自分を傷つけることが多い。強い思いはワンサイドに突っ走って止められないから、いったん思い込んだら大変。結果が良ければ有頂天になり、悪ければ奈落の底に落ちるのだが、問題は、奈落からどうやって這い上がるかだ。

 要は、いつまでも結果をひき摺らず、気持の切り換えを素早くすることだろう。

 競馬に自信満々は有り得ないし、一時的に結論を下しても、過信はしない。だからと言って、出した結論に不安を抱くこともない。

 思いにかなう結果に導く、念を込める。きっといいことにつながるぞと暗示をかける。こうした心持でいい結果につながると自分に言い聞かせるのだ。福を呼び込む、それだ。

 そうやっておいて、過信はせず、うまくいったら幸運ぐらいの気持にとどめて、他に言いふらすようなことはしないのだ。

 勝っても負けても、ほどほどの気分を保てるかどうか。度外れた自尊心は、いずれにせよ、競馬にもふさわしくない。また、自己卑下も、全くする必要もないのである。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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