2011年07月09日(土) 12:00
「南部杯は岩手競馬の看板レース。こういう年だからこそ、盛岡で開催してほしかった」。4日(月)、東日本大震災後初めて盛岡競馬場に行ったとき、とある人から「地元にはそういう声もあります」という話を伺いました。
斎藤さんも書かれていますが、今年の岩手競馬に高額賞金の交流G?を主催する財政的な余裕はなさそうです。JRAが南部杯を“代替開催”することで、レース中止という最悪の事態を避けられたのは、良しとしなければならないと思います。
また、馬券はJRAの発売網を通じて全国発売されるでしょう。その売上は地方のレースとして行われる場合よりも大幅に増え、そこから拠出される“震災復興支援金”がかなりの金額になることも期待されます。
とはいえ、冒頭でご紹介したような声があるのも事実。突拍子もない例えかもしれませんが、今年中止になった東京の神田祭や三社祭を名古屋や大阪で“代替開催”しても意味がない、というのと共通の理論でしょう。
そうそう、今年のプロ野球オールスター戦は、東京ドームで行われるはずだった試合を、被災地の仙台(日本製紙クリネックススタジアム宮城)に持っていきました。南部杯をJRA東京開催にしたのは、それとは正反対の動きと言えそうです。先に書いたように、“背に腹は代えられない”事情があったから、というのは承知していますが。
今年限りの“緊急措置”なら、南部杯をJRAのレースとするのはいいとして、盛岡で開催することはできなかったんでしょうか。当日の東京競馬を全11レースとし、第12レースを南部杯にすれば、マークカードなどはそのまま「東京・12レース」の扱いで馬券を全国発売できるはず。その上で、JRAの競馬場やウインズをすべてパブリックビューイング会場にしてレース映像を放映するんです。「きょうのメーンは南部杯」ってことで。
南部杯の地元開催にこだわる理由はほかにもあります。盛岡で行われれば、熱心なファンの方なら現地へ行って生観戦しようとするでしょう。そういうファンや遠征馬の関係者、報道陣などに、岩手競馬の奮闘をアピールする絶好のチャンスになると思われるからです。ホテルの宿泊費や食事代など、そういう方々が使うお金も、わずかではあっても地域経済にとってプラスになると思うのです。
なにはともあれ、今年の南部杯は東京で開催されます。どうか「東京でやってよかった」と思われるレースになりますように!
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矢野吉彦
テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。