2011年07月13日(水) 12:00 6
7月7日(木曜日)、フランスのドーヴィルにあるクラレフォンテーン競馬場で行われた、未出走の3歳牝馬のための新馬戦(芝2400m)を、日本産のディープインパクト産駒アクアマリーン(牝3)が優勝。見事にデビュー勝ちを果たした。
アクアマリーンは、フランスの大手オーナー・ブリーダーであるウィルデンシュタイン家の生産馬。所有する繁殖牝馬のアンジェリータ(その父アルゼイオ)を日本に送り、ディープインパクトを交配されて、08年3月26日に白老ファームで生まれたのがアクアマリーンである。母アンジェリータの2つ年上の全姉に、G1ビヴァリーディーSやG1ダイアナHを制したアンガラがいる血統である。
管理しているのは、フランスのトップトレーナーのひとりであるミケル・デルザングル。7日のレースでは、アガ・カーン殿下のオーナーブリーディングホース・カダヤ(牝3、父セルカーク)が単勝2.0倍の1番人気で、この馬が逃げた2番手を、単勝4.3倍の2番人気だったアクアマリーンが追走。あと2ハロンの辺りで交わしにかかったアクアマリーンが楽に抜け出し、2馬身半差の完勝劇を演じた。仏二千ギニーやジャックルマロワ賞を制したヴァオリミクスの半妹で、5.5倍の3番人気に推されたイルハベラ(牝3、父アザムール)が後方から追い込んだものの、カダヤから更に6馬身離れた3着になるのが精いっぱいだった。
父ディープインパクトの今年の3歳世代で、日本国外で勝ち上がったのは、アクアマリーンが3頭目のことになる。
1頭目は、これもヴィルデンシュタイン家のオーナーブリーディングホースのバロッチ(牡3)だった。3月31日にフランスのサンクルー競馬場で行われた準重賞オムニウム2世賞(芝1600m)で、同馬は初勝利を上げている。クラシックでの好走が期待されたバロッチだったが、ロンシャンで行われたG3フォンテンブロー賞(芝1600m)で4着となった後に挑んだG1フランス2000ギニー(芝1600m)が6着で、続いて出走した6月12日にシャンティーで行われたG3ポールドムーサック賞でも、その後G1ジャンプラ賞を制するミューチュアルトラスト(牡3、父カシーク)の5着に敗れている。
2頭目が、4月9日にイギリスのウォルヴァーハンプトンで行われたメイドン(AW9F103Y)で初勝利を上げた、モンスターマンチー(牝3)だった。社台ファームが生産した同馬は、母がG1サンタラリ賞勝ち馬ミュンシー(その父サドラーズウェルズ)で、兄にG2日経賞2着、G1天皇賞(春)3着などの成績を残したストラタジェム(父サンデーサイレンス)がいるという血統である。サセックスに本拠地を置くウィリアム・ナイト調教師の管理馬となり、今年2月9日にリングフィールドのメイドン(AW10F)でデビュー。3戦目の実戦となったのが、初勝利を挙げた4月9日のレースだった。モンスターマンチーはその後、5月27日にニューキャッスルで行われた条件戦(芝10F32y)で初めて芝のレースを経験し、3着となっている。
そして3頭目の勝ち馬となったのが、冒頭でご紹介したアクアマリーンだったわけだ。
08年に生まれたディープインパクト産駒で、海外で走っている馬はあと2頭いて、1頭はイギリスのトム・ダスコム厩舎にいるサンデーベス(牝3)。ここまで5戦し、まだ勝ち星はないが、デビュー戦となった昨年10月のリングフィールドのメイドン(AW7F)、今年5月にヘイドックで行われたメイドン(芝11F200Y)でいずれも2着になっており、組み合わせ次第ではいつでも初勝利を挙げておかしくない競馬をしている。もう1頭は、フランスのパスカル・バリー厩舎にいるティーピー(牝3)。ニアルコス家のオーナーブリーディングホースである同馬は、6月14日にコンピエーニュのメイドン(芝2400m)でデビューし、8着だった。
アクアマリーンのデビュー勝ちは、もちろんそれだけでも意義あることだが、勝ち星を挙げたのが2400m戦であったという点に、より大きな価値がありそうだ。
昨年初年度産駒がデビューしたディープインパクトは、35頭の2歳勝ち馬を輩出していきなり大ブレーク。3歳の春になって、マルセリーナがG1桜花賞、リアルインパクトがG1安田記念を制し、競走馬時代に匹敵する優秀性を持つ種牡馬との評価が固まりつつある。ただし、1600m路線で2つのG1を制した一方、皐月賞、オークス、ダービーといった2000m超のクラシックでは、複数の産駒を送り込んだものの芳しい結果を得られず、気の早い生産者からは「スタミナ不足」を指摘する声も出始めている。
だが、ヨーロッパで2400m戦線を主戦場とする産駒が出てくれば、評価は全く違ったものになる。
ヨーロッパ流のゆっくりとした仕上げで、3歳7月になって2400m戦でデビュー勝ちを果たしたアクアマリーンが、今後どんな軌跡を歩み、どんな競走馬となって完成されていくのか。注目したいと思う。
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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。