2011年07月21日(木) 12:00
生きていると、落ち込む穴もいっぱいあるもの。その中には、こんな自己暗示も含まれる。自分は駄目なやつだ、自分はきっと幸福になれないんだろうと。
暗い話になってしまうが、どこか自分の中にこんな想念があることもあると気付くのではないか。
元気はつらつであれば、少なくともそんな思いに落ち込むことはない。このことも、実はよく承知している。だから、空元気を出すこともするのだ。
こんな行ったり来たりが日常の生活であって、なにもかもが思い通り、願い通りにはなってくれない。そこのところを心得ているかどうか。様々な場面で自問する日々ではないだろうか。
競馬の場合、当然相手が馬だから、思い通りになる筈はないのが当たり前。気分の切り替えだって早く、落ち込む穴だってそんなに深くはない。
競馬の仕組みから言えば、競馬でいい思いをする方が少なく、多くが残念無念の瞬間を重ねて一日を終えているのだ。だから自分が駄目なやつだと思うことはないのだ。
いいことがあっても、それはたまたま。他人に自慢する話でもないと、よく知るものなら心得ている。だからと言って、冷めているのではない。日常生活では、抱こうと思っても抱けそうもない夢を、競馬なら持てるのだから。ただ、達人になると気分の切り替えがうまいのだ。
「馬だって走りたくないときもある」「困ったら馬の顔見て聞いてみる」とちょっと気分を変えることを知っているし、「やられたらひとつ休んで次ねらう」とか「いろいろと迷いが出たらやめてみる」と、自分の気持ちを上手にコントロールする術を知っているのだ。そして、「ひと休み気分を変えたらもしかして」と、次への希望をつないでいく。
競馬には生き抜く効用があるということ。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。