新星誕生なるか、アメリカ競馬牡馬路線

2011年07月27日(水) 12:00

フランケル(牡3、父ガリレオ)vs キャンフォードクリフス(牡4、父タギュラ)という世代間を越えた最強マイラー対決が話題を呼ぶG1サセックスS(グッドウッド競馬場、7月27日・日本時間夜11時10分発走)をはじめ、G1・5勝馬ミッデイ(牝5、父オアシスドリーム)、G1・4勝馬スノウフェアリー(牝4、父インティカブ)、前走G1プリティポリーSでミッデイを6馬身差粉砕したミスティフォーミー(牝3、父ガリレオ)、前走G2プリンセスオヴウェールズで牡馬相手に8馬身差の圧勝を演じたクリスタルカペラ(牝6、父ケイプクロス)と、超A級牝馬がスタンバイしているG1ナッソーS(グッドウッド競馬場、7月30日)、ゴールディコーヴァ(牝6、父アナバー)出走予定のG1ロスチャイルド賞(ドーヴィル競馬場、7月31日)など、今週のヨーロッパも見逃せない対戦が目白押しである。

 タレントが豊富で水準の高い攻防が随所で展開されているヨーロッパに比べると、いささか地味に進行しているのが今季のアメリカ競馬である。それでも牝馬路線には、古馬のブラインドラック(牝4、父ポラーズヴィジョン)やアヴレドグレイス(牝4、父セイントリー)、3歳のイッツトリッキー(牝3、父マインシャフト)やザズー(牝3、父タピット)のように、能力が高くて個性も際立つ馬たちがいるのだが、どうにも気勢が上がらないのが牡馬のダート/オールウェザー路線である。

 このまま軸となる馬を欠いたままシーズン終盤に突入するのか、あるいはここから急上昇して戦線を平定する馬が現れるのか、その分岐点となるかしれぬ2つの戦いが、今週末にアメリカ東海岸で行われる。

 1つは、7月30日にニューヨーク州のサラトガで行われる3歳馬のG2ジムダンディS(D9F)だ。

 新興勢力の代表格が、春の3冠には無縁だったものの、7月2日にベルモントパークで行われたG2ドゥワイヤーS(D8.5F)を逃げ切り、重賞初制覇を飾ったドミナス(牡3、父スマートストライク)だ。初勝利を挙げたのが今年3月26日で、続いていきなりG3ダービートライアルS(D8F)にぶつけて2着となった素質馬で、ここも白星で通過するようなら、3歳牡馬戦線の新星として祭り上げられる可能性がある。

 ベルモントSの前哨戦であるG2ピーターパンS(D9F)を勝ちながら、夏以降のキャンペーンをにらんでベルモントSは使わなかったオルターネイション(牡3、父ディストーテッドヒューモア)も、今後の活躍が楽しみな新興勢力の1頭である。

 対する旧勢力の代表が、ベルモントSの2・3着馬ステイサースティ(牡3、父バーナーディーニ)とブリリアントスピード(牡3、父ダイナフォーマー)だ。

 今季初戦のG3ゴーサムS(D8.5F)で重賞初制覇を飾ったものの、その後のG1フロリダダービー(D9F)、G1ケンタッキ−ダービー(D10F)では見どころの無い競馬で大敗したステイサースティ。4月のG1ブルーグラスS(AW9F)で重賞初制覇を果たしたものの、G1ケンタッキーダービーでは7着だったブリリアントスピード。いずれも、ベルモントSにおける好走は、泥んこ馬場となった中でうまく先行出来たためと分析されており、そういう意味では既成勢力といえども、ジムダンディSが今後への試金石となる馬たちと言えよう。

 翌7月31日にニュージャージー州のモンマスパークで行われるのが、3歳馬のG1ハスケル招待(D9F)である。

 総賞金100万ドルという高額賞金のこのレースには、G1プリークネスS(D9.5F)勝ち馬シャックルフォード(牡3、父フォレストリー)、G1ベルモントS(D12F)勝ち馬ルーラーオンアイス(セン3、父ローマンルーラー)が出走を予定している。

 G1フロリダダービー(D9F)2着、G1ケンタッキーダービー(D10F)4着と悪くない競馬を続けていたものの、プリークネスS優勝が重賞初制覇だったのがシャックルフォードだ。7FのG1キングズビショップS勝ち馬フォレストリーを父に持つ同馬には、ベルモントSの12Fは明らかに長かったはずだが、それもで5着と大崩れしなかったあたりに、この馬の能力の高さが表われている。ケンタッキーダービー馬アニマルキングダムが故障で、少なくとも年内一杯は戦線を離れることになり、今後の3歳勢力の中心は「この馬」と言われているだけに、期待に相応しいパフォーマンスを見せてもらいたいものである。

 ルーラーオンアイスにとっても、ベルモントSは初めての重賞制覇であった。前述した同レースの2、3着馬同様、単勝10番人気でベルモントSを制したこの馬も、馬場と展開に恵まれた勝利と言われており、ここが真価を問われる一戦となる。

 ハスケルで有力視されるもう1頭の旧勢力が、パンツオンファイア(牡3、父ジャンプスタート)だ。好メンバーが揃ったG2ルイジアナダービー(D9F)を制した後、G1ケンタッキーダービーは9着に敗れた同馬。その後の3冠2戦はスキップして、6月18日にモンマスパークで行われたG3ペガサスS(D8.5F)を制して2度目の重賞制覇を果たしている。 

 こちらのレースにおける新興勢力は、西海岸から遠征してくるコイル(牡3、父ポイントギヴン)だ。デビュー2戦目のメイドンで初勝利を挙げると、3連勝でG3アファームドS(AW8.5F)を制し重賞初制覇。前走7月9日にハリウッドパークで行われたG2スワップスS(AW9F)でも、自らより6ポンド(約2.7キロ)斤量が軽かった勝ち馬ドリーミーキッドに頭差2着と健闘している。ここまでオールウェザートラックのみで競馬をしている馬だが、管理するボブ・バファートの目論見通りにダートをこなして、この顔触れを相手に良い競馬が出来れば、ニュースター誕生と騒がれることになるはずだ。

 今週末は、アメリカの競馬にもぜひご注目いただきたい。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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