2011年08月17日(水) 18:00 2
今年で23回目となる道営ホッカイドウ競馬のブリーダーズゴールドカップ(JpnII)」が去る8月11日(木)、門別競馬場にて行われた。
遠征馬は中央から5頭、大井から1頭、地元道営馬が6頭の計12頭が出走。1着賞金3200万円は昨年より-300万円。一昨年からでは800万円の減となる。そんな事情もあってか、例年よりはやや小粒のメンバーとなった。
中央の5頭は、メイショウタメトモ(父ジョリーズヘイロー)武豊騎手、エーシンモアオバー(父マンハッタンカフェ)藤田伸二騎手、ピイラニハイウェイ(父Sijver Deputy)秋山真一郎騎手、ロールオブザダイス(父トワイニング)蛯名正義騎手、シビルウォー(父ウォーエンブレム)吉田豊騎手というメンバーである。
この5頭のうち、交流を含めた重賞勝ち馬はロールオブザダイス(2010年平安S)のみで、他の4頭はいずれもここを勝つと初重賞制覇となる。
一方の道営側の大将格はクラキンコ。牝馬ながら昨年は道営三冠レースを制し、今年もすでにコスモバルク記念と星雲賞の2つの重賞をものにしている。前走のノースクィーンカップは単勝1.2倍と圧倒的な支持を集めたが、ショウリダバンザイにわずかに及ばず2着。しかし道営勢では抜きん出た実績で、すでに10勝を上げている。
平日の開催ながら、中央の人気騎手が多く揃ったこともあり、この日はかなりの人出であった。お盆の休暇に入っているファンも多く、この日はパドックも大賑わいで、普段の開催日とは比較にならないほどの人垣である。
ファンで賑わうパドック
ブリーダーズゴールドカップは第11レース、午後8時の出走予定だ。第10レースが終わった頃から出走各馬がパドックに現れ、周回を始めた。この日はいつになく門別競馬場も気温が高く、太陽がすっかり落ちた午後7時半になっても汗ばむほど。
各馬がパドックを回るうちに、いよいよ騎手が登場した。単勝1番人気はエーシンモアオバー。続いてメイショウタメトモ。やや離れた3番人気にシビルウォー。そしてピイラニハイウェイ、クラキンコと続いている。やはり中央勢が上位を占める傾向は変わらない。
次々に出走馬がパドックから消え、馬場に通じる馬道を降りてコースに入って行く。
締め切り時刻が迫っていたが、いつになくファンが詰め掛けているため、発売機の前には長蛇の列ができているのであろう。しきりに「ポラリスドーム(新スタンド)は大変混雑していますので、旧スタンドの方に回って下さい」と場内アナウンスが流れる。やはり、かなりの混雑なのだ。
定刻をやや過ぎたあたりでスターターが旗を振る。いよいよブリーダーズゴールドカップのスタートである。ゲート入りが進み4コーナーポケットから一斉に各馬が飛び出した。
まず先行するのはエーシンモアオバー。果敢にレースを引っ張り、そのまま逃げ切る戦法で過去7勝をマークしてきたエーシンモアオバーがいつものように先頭を走り、続いてメイショウタメトモ、ピイラニハイウェイ、ロールオブザダイスと続く。
レースを引っ張るエーシンモアオバー
そのまま1コーナーから2コーナー、そして向こう正面から3コーナーにさしかかっても展開があまり変わらない。
4コーナーを回ったところでシビルウォーが抜け出す。他の馬とは明らかに脚色が違う。見る見る間にどんどん加速し、2着以下を大きく引き離して独走態勢になった。
1着はそのままシビルウォーがゴール板を駆け抜け、6馬身差の2着にメイショウタメトモ、1.1/2馬身差の3着にエーシンモアオバーが入り、以下、4着ピイラニハイウェイ、5着ロールオブザダイスと中央勢が掲示板を独占した。
初重賞制覇を果たしたシビルウォー
5着ロールオブザダイスから4馬身遅れてクラキンコが入り、そこからさらに9馬身差の7着がリフレックス(道営)である。現時点での中央馬と道営馬との力量差が出る結果となった。
勝ったシビルウォーは父ウォーエンブレム、母チケットトゥダンス(その父Sadler's Wells)という血統の牡6歳。美浦・戸田博文厩舎所属。生産は千歳・社台ファーム。馬主は(有)社台レースホース。ちょうど1年前の新潟・関越ステークス(OP)以来の勝利で、しかも初の重賞勝ちとなった。
ついでながら、父ウォーエンブレムはこのシビルウォー世代がもっとも産駒数が多く、しかもよく走る。同世代にはブラックエンブレム、キングスエンブレム、ウォータクティクス、ショウナンアルバなどがおり、晴れてシビルウォーもこれら重賞勝ち馬の仲間入りを果たしたことになる。
喜びをかみしめる関係者のみなさん
それにしても、4コーナーを回ってからの末脚は恐るべきもので、上がり3ハロンは36.9秒を計時した。
2着メイショウタメトモの39秒4、3着エイシンモアオバーの39秒9と比較しても断然速く、これでは他馬はついて来られない。ともあれ、ダート界にまた新たなヒーローが参入した印象である。
この日の門別は入場人員が1738人を数え、前日よりも一気に1000人もの増加となった。売り上げは2億9820万円とほんの少しだけ3億に届かなかった。
なお、本日(17日)は、2歳馬の一線級が出走するブリーダーズゴールドジュニアカップが行われる。
去る7月5日、栄冠賞を圧勝した後、ソエによりラベンダー賞(函館)を回避したウィードパワーが満を持して登場することになっており、こちらも楽しみなレースである。
田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。