フォワ賞&ニエユ賞回顧

2011年09月14日(水) 12:00

9月11日(日曜日)、3週間後に迫った凱旋門賞と同じコースの同じ距離を舞台とした、3つのレースが行われた。

 第2競走に組まれた4歳以上の牡馬と牝馬によるG2フォワ賞は4頭立て。フランスにおけるこの路線の前半戦の総決算G1サンクルー大賞で牡馬を封じて3度目のG1制覇を果たして以来の出走となるサラフィナ(牝4、父リフューズトゥベンド)が1.7倍の1番人気。6月のコロネーションCで2度目のG1制覇を果たした後、G1キングジョージは3着だったセントニコラスアベイが3.0倍の2番人気。悲願のG1初制覇を果たした春の天皇賞以来の出走となったヒルノダムール(牡4、父マンハタンカフェ)が6.0倍の3番人気。昨年の凱旋門賞2着馬で、その後のジャパンC以来10か月半振りの出走となったナカヤマフェスタ(牡5、父ステイゴールド)が9.0倍の4番人気だった。

 日本馬2頭は抜群のスタートを切ったが、プレップレースでもあり、先行馬不在だったこともあり、フランス特有のスローペースになった。そんな中、ハナに立ったのはナカヤマフェスタで、2番手セントニコラスアベイ、3番手ヒルノダムール、4番手サラフィナの隊列でレースは進んだ。

 出走馬全てがG1馬という、水準の高い顔触れが集った中、直線の瞬発力勝負で1頭だけ抜きん出た切れ味を見せたのがサラフィナだった。外に出している余裕はないという鞍上クリストフ・ルメールの判断で、わずかな隙間をこじ開けるようにして、セントニコラスアベイとヒルノダムールの真ん中に馬体をねじ込み、脚を伸ばして優勝。これで、次走にダメージを残さない競馬を心がけたというのだから恐れ入る。

 初体験だったロンシャンの馬場で、普段と全く変わらぬ走りを見せたヒルノダムールもあっぱれだった。

 ナカヤマフェスタも、10か月半ぶりの出走で勝ち馬から3馬身余りなら、申し分のない競馬だったと言えよう。今年のフォア賞は昨年よりハイレベルだったことを鑑みれば、前哨戦の内容としては、昨年よりもむしろ今年の方が上とも言える。

 期待の高さに比べると、いささか物足りない印象を否めないのがセントニコラスアベイだ。凱旋門賞前売り本命の座にありながら、故障で引退を余儀なくされたプルモア(牡3、父モンジュー)と同じ陣営に属する馬だが、現状ではプルモアの代わりを務めるのは難しそうだ。この馬が頼りにならないとして、同陣営の総大将ソーユーシンク(牡5、父ハイチャパラル)が出て来れば、凱旋門賞はより一層面白くなる。

 第3競走に組まれた3歳の牡馬と牝馬によるG2ニエユ賞は6頭立て。やはり、凱旋門賞と同じコースの同じ距離を使って7月に行われたG1パリ大賞の勝ち馬メアンドル(牡3、父スリックリー)が1.6倍の1番人気。今年のG1仏ダービー勝ち馬で、パリ大賞では3着に敗れたリライアブルマン(牡3、父ダラカニ)が3.4倍の2番人気。3番人気に推されたヴァダマー(牡3、父ダラカニ)のオッズが9.0倍だったから、ほぼ2頭の一騎打ちというのが下馬評だった。ちなみにナカヤマナイト(牡3、父ステイゴールド)は、オッズ34倍で6頭中の最低人気だった。

 ハナを切ったのは、メアンドルと同厩のキングオヴアルノール(牡3、父モンズン)。仏ダービー4着という実績のある英国調教馬コロンビアン(牡3、父アザムール)が2番手で、リライアブルマンが3番手。7着に終わった英ダービー以来の出走となったヴァダマーが4番手で、最後方にメアンドルとナカヤマナイトが並ぶ展開となった。

 フォルスストレートに入ってペースが上がると、ナカヤマナイトは付いて行けず、結局最下位に敗れることになった。鞍上の柴田騎手によると「下を気にしていた」そうで、残念ながらロンシャンの馬場を巧くハンドリング出来なかったようだ。

 残り300m辺りで先頭に立ったのがリライアブルマンで、そこからグイグイと伸びて2馬身差の完勝。外からメアンドルが追い込むも伸びを欠き、ゴール前ではヴァダマーの追撃を受けて危うく2着の座も失うところだった。

 リライアブルマンの伸び伸びとした走りは実に魅力的で、私の個人的印象はAランクだ。逆に走りが窮屈に見えたのがメアンドルで、伯楽アンドレ・ファーブルが本番までにどう立て直してくるか、見ものである。

 フォワ賞とニエユ賞が bon souple(やや重)で行われた後、現場は土砂降りの雨に見舞われ、第6競走に組まれた3歳以上の牝馬によるG1ヴェルメイユ賞が行われた時には、馬場はtres souple(不良)まで悪化していた。

 G1仏オークス2着馬で、前走ドーヴィルのG2ギョームドルナーノ賞で牡馬を破って2度目の重賞制覇を果たしたガリコーヴァ(牝3、父ガリレオ)が1.8倍の1番人気。G3ロワイヤモン賞、G2マルレ賞と連勝中だったテストステロン(牝3、父ダンシリ)と、前走G3ミネルヴ賞で重賞初制覇を果たしたシャリタ(牝3、父シンダー)の2頭が、オッズ5.8倍で横並びの2番人気となった。

 レースはシャリタが引っ張り、英オークス2着馬ワンダーオヴワンダース(牝3、父キングマンボ)が2番手。内埒沿いの3番手がテストステロンで、4番手がガリコーヴァという隊列となった。

 直線に向いてあと400mの辺りで鞍上O・ペリエが追い始めたガリコーヴァが、残り200m付近で先頭へ。ゴール板では2着テストステロンとの差が2.1/2馬身まで広がっていた。

 ギュームドルナーノ賞の時にも感じたが、ガリコーヴァを良い脚を長く使うタイプのようだ。父アナバーの姉ゴールディコーヴァとは、異なる適性を持つ馬であることは間違いなさそうである。

 主な前哨戦を終えた段階で、大手ブックメーカーの前売りオッズは以下の通りである。

※左からコーラル-ラドブロークス-ウィリアムヒル、※はオッズ未発表
サラフィナ      4.0-4.0-4.5
ワークフォース    6.5-6.0-6.0
ナサニエル      6.5-6.5-6.5
ソーユーシンク    7.0-8.0-6.5
ガリコーヴァ     9.0-7.0-7.0
リライアブルマン   8.0-8.0-8.0
メアンドル     13.0-15.0-15.0
スノウフェアリー  21.0-※-21.0
ヒルノダムール   26.0-21.0-21.0
ナカヤマフェスタ  34.0-26.0-34.0
セントニコラスアベイ41.0-34.0-34.0
ヴァダマー     ※-34.0-26.0
トレジャービーチ  34.0-※-34.0

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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