2011年09月21日(水) 18:00
去る9月14日(水)から16日(金)にかけて、2泊3日の日程で「浦河ふるさと農業体験ツアー」が実施された。
主催は浦河町担い手育成総合支援協議会内のグリーンパートナー支援事業実行委員会。長ったらしい名称だが、つまりは行政が音頭を取り、予算は「税金」から賄われる仕組である。
対象は20歳から40歳までの独身女性で、集合場所は千歳空港。女性に関しては、ここからツアーが終了して解散となるまでの費用は一切かからず、すべて受け入れる側の負担となる。
「将来農業にたずさわってみたい方や農業経営者との結婚を考えている方」を募集した。当初は20名を予定しており、締め切りを7月末と設定していたが、思うように参加申し込みが伸びず、1か月間延期して8月末まで応募を受け付けた。
浦河ふるさと農業体験ツアー
初日。集合場所に集まった女性は10名。当初は12名の申込みがあった由だが、当日になってキャンセルが出たり、集合時間に現れなかった女性もいたらしく、この人数になったという。
一行はまず門別競馬場に向かった。火、水、木の3日間開催が基本である道営ホッカイドウ競馬を見ながら、ここでジンギスカン料理を楽しんでいただこうという趣旨である。
ただし、午後の早い時間帯のこと。ナイター競馬を堪能するには早い。後述するがこの門別競馬場でのメニューを最初に持ってきたことが後の日程を窮屈にしてしまった点は否定できない。
初日は門別から優駿ビレッジ・アエルに直行し、夜の予定は組まれていなかった。
2日目。天候はまずまず。この日は午前9時より町内の酪農家に赴き、搾乳体験を行った。その後、町の乗馬公園に移動しての乗馬体験となった。
受け入れる地元には現在40名を超える独身農業後継者がいる。大半が軽種馬生産牧場である。乗馬体験では、そうした後継者の中の数人が参加して、女性を馬に乗せ、手綱を持って引き馬をする光景が見られた。
2日目は乗馬体験も
10名の女性の中には乗馬経験者もいて、自力で手綱を操り、軽速歩から駈歩まで披露する“達者”な女性の姿もあった。
午前はここまで。アエルにて昼食の後、午後は町内の農家でイチゴ狩りなど行い、その後は個々の牧場や農場を訪れ現場を見学するメニューが用意された。
2日目はかなりタイトなスケジュールとなった。夕刻からは懇親会が宿泊先のアエルで開催された。立食形式でまず双方が両側に並び、自己紹介をしてパーティーとなる。
余興にビンゴゲームなども用意され、約2時間のパーティーは和やかに進んで行った。
夜は懇親会が行われた
午後8時過ぎ。町内の歓楽街までバスで移動した一行は、その後二次会に参加し、最後はいくつかのグループに別れて深夜まで交流が続いたという。
3日目は午前中にBTCの施設などを見学し、バスに乗り込んで浦河を後にした。受け入れ側は18人の独身男性のほか、町役場職員、お手伝いをする実行委員など20数名がこのツアーに関わる大所帯。初めての試みという事情もあり、反省点の多いツアーとなった。
今回、募集は主としてネット上で行われ、「将来農業にたずさわってみたい方」と謳ったことから、必ずしも馬や競馬に関心のある人が集まったわけではない。しかし、受け入れ側は圧倒的多数が馬業界の後継者であり、ややミスマッチとなってしまった感がある。
また、20名募集が結果的には半数の10名にとどまった原因は、ひとつには日程にもよるだろう。平日の2泊3日は、やはり仕事の都合で休めない人も多く、土日を含む3連休のどこかに設定すべきだったのではあるまいか。
軽種馬生産を生業にしていると、今も昔も異性との「出会いの場」がほとんどない。しかし、現実問題として、この浦河だけでも40数名もの独身の後継者が町内全域に分布しており、業界の将来を担う若者に花嫁対策は急務なのである。
この事業は来年以降も続けられるという。早々に“成果”を出すことは難しいとは思うが、まずは着実に継続されることを願いたい。
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田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。