フクイズミ、岩見沢記念

2011年09月28日(水) 18:00

 9月25日(日)、帯広競馬場で「第47回岩見沢記念」が行われ、目下2連勝中の芦毛牝馬フクイズミ(10歳)がここでも人気通りの圧勝劇を演じた。

 岩見沢記念は昨年に続く連覇となり、これでこのレース3勝目。今シーズンはなかなか勝てないまま夏を迎えたが、8月14日ばんえいグランプリでニシキダイジンに2.2秒差の2着と迫る好走を見せ復活した。

女傑フクイズミの気迫のレース

女傑フクイズミの気迫のレース

 それ以後は、危なげないレース運びで白夜賞(8月20日)、ポテト特別オープン(9月11日)と続けて完勝し、今回の岩見沢記念で3連勝となったのである。

 フクイズミは松井浩文厩舎所属。旭川市の(有)さくら牧場生産で、馬主は(有)トーヨーファーム。これで実に170戦目のレースとなり、58勝、2着27回、3着20回という成績を残している。収得賞金は2895万4千円。

 改めて戦績を調べてみると、3連勝は実に2007年秋以来4年ぶりのことになる。次走の予定は10月30日北見記念になりそうだが、この調子ならば一線級と好勝負が期待できそうだ。

 昨シーズン終盤には引退説も流れたフクイズミだが、ばんえい競馬ではひじょうに高い人気を誇り、この岩見沢記念でも多くのファンが応援した。レース後、やや離れたところで表彰式の様子を見守る同馬の前には人垣ができて、盛んにカメラのシャッターが切られていた。

口取りにはたくさんのいファンが集まった

女口取りにはたくさんのいファンが集まった

 ところで、ばんえい競馬は先月より三連勝馬券の導入に踏み切った。それにともない、従来発売されていた枠番連勝複式は廃止となり、現在は単勝、複勝、馬番連勝複式、馬番連勝単式、そして三連単と三連複の6種類である。

 ただ、肝心の売り上げが伸び悩んでおり、今年度4月〜8月までの数字は、開催日が59日(前年比+2日)、総売り上げが37億4642万円余で、1日平均で6349万円にとどまっている。前年より-4.6%である。

 1日平均の売り上げでは今や全国最下位となっており、先ごろ廃止が決定した荒尾をも下回る厳しい数字(荒尾は1日平均7566万円)だ。三連勝馬券導入の効果が表れているとは言い難く、また入場人員も1715人と前年比で0.8%増加だから、ほとんど変わらない。

 昨年8月には帯広競馬場に隣接した場所に「とかち村」がオープンし、新たな観光スポットとしての集客効果が期待された。買い物をしていただいた観光客に入場券を配布し、そのまま競馬場に足を踏み入れてもらおうという狙いがあったわけだが、果たしてどれほどの新たなファン開拓につながったものか、少なくとも数字の上からではそれがうかがえない。

 なにより気になるのは、場内における1人あたりの馬券購買金額の低さである。ばんえいの場合は、今年度4月〜8月までのデータによれば、8200円と、これも全国水準を大きく下回る。地方競馬全体では平均が1万7000円。前年比98.3%と健闘しているものの、ばんえいの8200円は前年より22.2%もの下落である。

 高齢ファンや、前記のとかち村から流入してきた観光客も同じ入場者としてカウントされているためなのか、全国平均の半額以下というのは何とも気になるところだ。

 ばんえいは、売り上げ全体の78%を場外に依存しており、こちらは前年をやや上回っている。中でも電話投票は前年比で127.8%もの伸びを示しており12億7281万円。実に売り上げ全体の33.4%に相当する。

 これから北海道の観光地はシーズンオフに入り、もうすぐそこまで冬の足音が聞こえてきている。ばんえい競馬も来月中旬にはナイターから昼間の開催に戻る。

 また定期的に帯広に通うつもりでいるが、何とか世界で唯一のこの個性的な競馬を守る方法がないものか。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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