2002年12月10日(火) 13:47
ヨーロッパ最高のブリーディングストック・セール『タタソールズ・ディセンバーセール』が、12月5日(木曜日)、1歳・当歳・繁殖の3セッションから成り立つ9日間の日程を終了した。
セッション・トータルでは、総売り上げが前年比6.2%アップの5458万ギニー(およそ109億円)、平均価格が前年比2.3%ダウンの36,290ギニー(約725万円)、中間価格が前年と全く同じ15,000ギニー(約300万円)と、景気の先行きが世界的に不透明な中で行われたマーケットとしては、予想を覆す堅調に終わった。
マーケットのシェアとしては繁殖牝馬セッションが全体の6割以上を占めているものの、市場を押し上げたのは当歳セッションだった。当歳セッションだけの売り上げ1724万ギニー、平均価格の29,483ギニー、中間価格の14,000ギニーは、いずれもディセンバー・セール史上のレコードプライスだった。
中でも市場が沸いたのが3日目。セールスリングに父ジャイアンツコウズウェイ、母アーバンシーの牝馬が登場した時だった。父はこの世代が初年度産駒となる期待の新種牡馬。母が凱旋門賞馬で、兄に昨年の欧州最強3歳馬ガリレオがいるという、カタログが出来上がった時から話題となっていた馬である。活発なビッドの応酬の末、180万ギニー、およそ3億6千万円という、当歳牝馬としては歴代の世界最高価格で、アメリカのライヴ・オーク・スタッドが購買した。
当歳セッションにおける日本人によると見られる購買は3頭。中でも、19万ギニーで購買された父デインヒル、母デルラーの牝馬は、母が欧米両大陸で3つの重賞を制している活躍馬で、2年後のデビューが非常に楽しみな逸材である。
繁殖セッションのハイライトは、昨年7月に亡くなった故ファハド・サルマン殿下のニューゲート・スタッドからの大量放出。全部で16頭が上場され、平均263,313ギニー(約5266万円)という高値で購買された。中でも、87万5千ギニー(約1億7500万円)という牝馬セッションの最高値が付いたのが、11歳の牝馬ヴェルヴェットムーン。本馬自身が現役時代はG2ロウザーSの勝ち馬で、産駒に今年の英ダービー3着馬ムーンバラードがおり、現在はデイラミを受胎中。「現段階で名前は公表できない」馬主の代理で、エージェントのアンソニー・ペンフォールド氏が落札した。
繁殖セッションにおける日本人購買は15頭。日本人によると見られる最高値は、現役時代G3コリーダ賞の勝馬で、牡馬に混じってG1サンクルー大賞でも入着しているアクセレレーションの30万ギニー。アクセレレーションは現在、この世代が初年度産駒となるガリレオを受胎している。
2番目の高値が、母として既に今年のLRオークストライアルS2着馬バーザーを輩出しているレピカに付いた12万ギニー。本馬は現在、シングスピールを受胎している。日本人購買者におけるシングスピール人気は高く、この馬を含めて3頭のシングスピール受胎牝馬が、日本人によって購買されている。
血統的に注目したいのが、8万ギニーで購買されたアニマ。アニマの母はココットだから、ピルサドスキーやファインモーションの兄弟にあたる牝馬である。現在はシンダーを受胎中だが、来春にこちらで出産して、更にデインヒル系の種牡馬を受胎させて日本へ来れば、ファインモーションとほぼ同配合の子が日本で生まれることになる。長い目で動向をフォローしたい牝馬である。
バックナンバーを見る
このコラムをお気に入り登録する
お気に入り登録済み
お気に入りコラム登録完了
合田直弘「世界の競馬」をお気に入り登録しました。
戻る
※コラム公開をいち早くお知らせします。※マイページ、メール、プッシュに対応。
合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。