札幌開催の最終週、恒例の札幌2歳Sが行われた。

　今年、このレースを制したのはグランデッツァ。周知の通り、桜花賞馬マルセリーナの半弟という筋の通った血統馬である。

　父アグネスタキオンも一流種牡馬だが、母マルバイユはイタリア、フランスを中心に24戦11勝を挙げた実績馬で、フランスではGIレースも勝っている名牝である。その偉大な母から生まれたのがマルセリーナであり、グランデッツァというわけだ。

　これで3戦2勝。デビュー戦こそ、マカハの後塵を拝したものの、2戦目の未勝利戦では2着馬マイネルテュールに8馬身もの差をつけ優勝。中1週で札幌2歳Sに駒を進めてきた。

　2戦目の勝ち方があまりにも鮮烈だったことから、グランデッツァは当日単勝1.6倍の1番人気に支持され、人気通りにゴールドシップを1/2馬身押さえて優勝した。

　血統的背景からも来年のクラシック戦線での活躍が期待される逸材と言って差し支えなく、このまま王道を進んで行きそうな予感も漂う。

　それにしても、この日(10月1日)の札幌は、まさしく「社台デー」であった。第1レースは2歳未勝利戦だったが、そこに登場したのはカアチャンコワイという個性的な名前のクロフネ産駒で、終始先行して勝利を収めた。生産は千歳・社台ファーム。

　幸先良いスタートを切ったこの日は、第3レースでもナイキトリック(父サクラバクシンオー、白老ファーム生産)が勝ち、続いて第4レースでもファンタズミック(父ハーツクライ、ノーザンファーム生産)が優勝した。

　勢いは衰えることなく続き、第6レースではダイワリューリン(父ネオユニバース、社台ファーム生産)が、第9レースではアドマイヤツバサ(父ロージズインメイ、ノーザンファーム生産)が、そして第10レース「手稲山特別」ではクィーンズバーン(父スペシャルウィーク、ノーザンファーム生産)が、それぞれ1着となった。

　メーンの札幌2歳Sと合わせて、この日、札幌だけで実に社台グループ全体では7勝もの「固め打ち」であった。

　しかし、さらに驚くべき展開が待っていた。周知の通り、翌2日に中山で行われた、第45回スプリンターズSにおいて、目下4連勝中のカレンチャンが牝馬ながら並みいる強豪をねじ伏せて優勝し、GI馬の仲間入りを果たしたのである。生産は社台ファーム。同レース2着のパドトロワも同じ社台ファーム生産であり、生産馬のワンツーというおまけつきであった。

　うれしいニュースは、かの地からも届いた。ヒルノダムールとナカヤマフェスタが参戦し話題となった凱旋門賞で、優勝をさらったのはドイツの3歳牝馬デインドリーム。なんとこの馬の所有権の半分を、レースの数日前に吉田照哉氏が取得していたことが報じられた。

　単なる偶然だけでは片づけられない情報収集力と決断力、資金力を連想させられるエピソードである。もはや国内に、社台グループに太刀打ちできる勢力はいないと改めて強く印象付けられた気がする。

　秋の最初のGIをワンツーで制覇し、好調なスタートとなった社台グループは、このところ勝てそうな重賞はほぼ手中に収めている。中央のみならず、地方競馬の交流重賞においても然り。取りこぼしがなくなってきているのは確かで、そのあおりを受け、社台グループ以外の牧場で生産された馬たちは総じて苦戦を強いられている。

　もちろんこれは勝負の世界だから、強い馬が勝つのは当たり前のことで、いささかも不思議なことではない。ここまでワンサイドゲームになるにはそれなりの要因がおそらくあるわけで、ほんのわずかの違いが蓄積された結果、今日のような大差がついてしまったのだろうと思う。

　そこには、かつていくらでもあったような「偶然」や「意外性」が介在する余地などなくなっているかのようにも映る。血統的裏付けのある馬がほとんど予定調和的に勝利を収める競馬が目に付くようになり、その分だけ中小牧場の生産馬は徐々に駆逐されつつある。

　この眼前に聳え立つ「巨人」に、どうやったら立ち向かえるのだろうか。