2011年10月19日(水) 18:00
10月13日(木)、門別競馬場にて2歳牝馬による交流重賞「第14回エーデルワイス賞」が行われた。道営ホッカイドウ競馬で行われる交流重賞は4レースあり、その第3弾ということになる。距離1200m。
JBC協会の協賛によって副賞にハービンジャーの配合権利がプレゼントされる豪華版で、1着賞金は2000万円。中央から4頭、他地区(名古屋)から1頭、地元道営から11頭の計16頭がエントリーし、フルゲートとなった。
人気を集めたのは中央から参戦した2戦2勝のシェアースマイル。単勝1.8倍に支持され、続いて同じ中央勢のフリスコベイ、アイアムネフライトが続いた。地元の道営勢ではロクイチスマイル、レイモニあたりが人気となった。
この日の門別は日中からよく晴れていたが、前日に降雨があったことから馬場状態はやや重。日が落ちると気温は徐々に低下し始め、エーデルワイス賞発走の午後8時には、10度を切るくらいの寒さ。そのせいでもあるまいが、交流重賞にしてはやや寂しい場内であった。
枠入りが始まった。1番人気の8番シェアースマイルがなかなかゲートに入らず手こずる場面もあったが、どうにか全馬がおさまりスタート。シェアースマイルはやや出遅れた。
レースはフリスコベイ、ユカナ、アイアムネフライトが引っ張る展開で進み、その後方をジョウノソナタとシェアースマイルが追走する。外目を回ったシェアースマイルが4コーナーを回ると先行馬を交わし抜け出した。
粘るシーキングブレーブを2分の1馬身押えて優勝。直線で果敢に追い込んできたロクイチスマイルがさらに2分の1馬身差の3着。中央馬が勝ち、2着、3着は地元の道営勢が意地を見せた。
シェアースマイルは重賞初制覇となった
勝ったシェアースマイルは父プリサイスエンド、母エフケーサクラ(母の父キンググローリアス)という血統で、生産は新ひだか町の(有)加野牧場である。馬主は小林秀樹氏。美浦・栗田徹厩舎所属で騎乗は丸山元気騎手。
丸山騎手は「デビュー戦から乗っている馬なので能力が高いことは分かっていました」と言いながらも「ゲートがちょっと問題ありですね」と振り返った。
丸山元気騎手は爽やかにインタビューに答えた
生産者の加野牧場・加野英樹さん(48)は「もともと、この馬は1歳秋まで行き先が決まっていなくて、やむなく道営に入厩させていたんです。蹄が薄く、おまけにOCDの手術なんかもした馬なので、自分で使うつもりでいました」と語る。
「ところが、道営で乗り始めたら動きがいいのでトレード話が成立して売買になったという経緯があります。そのまま道営からデビュー予定だったそうですが、その後、浦河のBTCに移動して育成していたところ、かなり能力がありそうだということになり中央入りが実現したと聞いています」と顔をほころばせた。
勝利を喜ぶ関係者のみなさん
これで3戦3勝。父プリサイスエンドはこれまでグロリアスノア(根岸ステークス、武蔵野ステークス)、プリマビスティー(東京2歳優駿牝馬)、ショウリダバンザイ(浦和桜花賞、ロジータ記念)などを輩出する日高でも人気の種牡馬だが、こうしてまた1頭、新たな重賞勝ち馬を生み出した。
生産者欄もそうだが、ことに種牡馬に関しては、今は社台スタリオン全盛の時代である。こういういかにも日高色の濃い血統の馬が重賞勝ちをおさめたことにむしろ安堵する思いだ。
なお、シェアースマイルの母エフケーサクラは今年、タイミング良く姉と同じプリサイスエンドの牡馬を出産している。加野さんによると「顔の流星は少し違うけど、雰囲気は本当に似ている」と期待を寄せている。この全弟の行く末もまた気になるところだ。
加野牧場は周知の通り、かのコスモバルクの生まれ故郷として知られる。他にもマイネルセレクトなども生み出している。これでまた今後楽しみな2歳馬が出てきた。
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田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。