ジェイエス繁殖馬セール

2011年11月02日(水) 18:00

 11月2日(水)、新ひだか町静内にある北海道市場にて(株)ジェイエス主催の繁殖馬セールが開催された。

 このところ北海道は好天が続いており、この時期にしては気温も高く過ごしやすい1日であった。

 午前8時に開場すると、さっそく購買者が目当ての馬の馬房を訪れ、念入りにチェックする光景が見られた。繁殖馬セールの場合は、比較展示はなく、各々がそれぞれ個別に販売者に依頼し、馬を引き出してもらう形式である。

 せり開始は午前10時。名簿上では190頭もの上場頭数に達していたが、当日までに11頭の欠場があり、実際にせりにかけられたのは179頭。

繁殖牝馬せり会場

繁殖牝馬せり会場

 うち106頭が落札され、売却率は59.22%であった。売り上げ総額は2億9579万5000円。3億円にわずか届かず、昨年との比較では上場頭数で-11頭、落札頭数で-20頭、売り上げ総額でも-4825万と前年の同セールを下回った。ただし、落札平均価格は昨年の273万0583円から微増し、279万0524円となった。

 国内唯一の繁殖馬を対象としたこのセールは、日高を中心に、各地から新たな繁殖牝馬を求める生産者や馬主などが集まり、注目度が高い。

 昨年の同セールにおいては、グランプリボスの母ロージーミストが登場し、210万円で落札された。

 周知のようにグランプリボスは、セール終了直後に行われた京王杯2歳S(11月13日)と朝日杯FS(12月19日)を連勝し、3歳になった今年、NHKマイルCをも1番人気で制した実力馬である。セールの時点ではまだ新馬を勝っただけだったが、その後大きく出世したわけで、結果的に安い買い物であったとも言える。

 ロージーミストに限らず、過去にこのセールで取引された繁殖牝馬から生まれた活躍馬は枚挙にいとまがないほどで、他にもマイネルキッツ(天皇賞・春)やセイウンワンダー(朝日杯FS)、もっとさかのぼればシリウスシンボリ(ダービー)やフラワーパーク(スプリンターズS)などの名前も上がる。

 今年も、社台グループからの上場馬が多く、実に179頭中85頭に達した。社台コーポレーション27頭、社台ファーム28頭、ノーザンファーム15頭、ノーザンレーシング?2頭、追分ファーム3頭という内訳で、注目馬の多くがこの中にいた。

 最高価格馬は13番の「フェザーレイ」。父エルコンドルパサー、母エルフィンフェザー(その父サンデーサイレンス)という血統の10歳黒鹿毛で、メイショウサムソンを受胎しており、来年の出産予定日は3月8日である。

今年の最高価格馬フェザーレイ

今年の最高価格馬フェザーレイ

 祖母はダイナカールで、エアグルーヴは伯母、アドマイヤグルーヴやルーラーシップ、オレハマッテルゼなどがいとこになる名血で、自身も18戦3勝2着5回の成績を残している。販売者はノーザンファーム。200万円からのスタートだったが、価格は少しずつ小刻みに上昇し続け、1701万円(税込)で(有)高昭牧場が落札した。

 次点は95番「ダフィーナ」の1065万5000円(税込)。この馬は父Mtoto、母Dafayna、その父Habitatという血統のアイルランド産11歳青鹿毛馬。ステイゴールドを受胎しており、来年の出産予定日は1月24日。400万円からせりが始まったが、ステイゴールド人気も後押しして1000万円を突破した。

ダフィーナのお腹にはステイゴールド仔が

ダフィーナのお腹にはステイゴールド仔が

 ただ、大台を超えたのはこの2頭だけで、2000万円を超える落札馬が2頭いた昨年と比較すると、今年は価格的にはやや小粒だった印象だ。

 その一方で、低価格馬も少なく、昨年は8頭いた税込21万円以下の落札馬が今年は4頭にとどまった。

 毎年感じることだが、このセールに出てくる高齢の繁殖牝馬はまず売れないか、落札されてもひどく安い。それぞれ事情があるにしても、どうせ売りに出すのならば、なるべく年齢が若いうちに手放すべきで、15歳を過ぎると購買者の食指はほとんど動かなくなる。

 反対に、競馬から上がったばかりの未供用馬は概して人気が高かったことを付記しておく。 

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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