ジョッキーベイビーズ2011

2011年11月09日(水) 18:00

 先週日曜日(11月6日)の東京競馬場はメインがアルゼンチン共和国杯で、GIのない週のせいか、その前週の天皇賞と比較すると場内は閑散としていた。

 しかし、この日の昼休みに実施されたのが「全国ポニー競馬選手権、ジョッキーベイビーズ」(以下、JB)だ。

 各地で乗馬に励む少年少女たちにとって、このレースがひとつの大きな目標になっている。今年で3回目を迎え、前日の昼過ぎに全国各地の予選を勝ち抜いた8人が東京競馬場の乗馬センターに集まってきた。

第3回目を迎えたジョッキーベイビーズ

第3回目を迎えたジョッキーベイビーズ

 北海道地区2人(大池悠梨香さん、木村和士君)、関東地区2人(石井李佳さん、市川陸君)、長野地区1人(永井孝典君)、関西地区2人(名倉賢人君、出口莉穂さん)、九州地区1人(吉永彩乃さん)という面々である。

 8人のうち最年少は吉永彩乃さんの小学校4年生。北海道の木村和士君が小学校6年生の他は全員中学校1年生だ。出場資格は小学生及び中学校1年生以下となっており、つまりこれら8人のうち6人は「最後のチャンス」をつかんで東京行きを実現させた少年少女たちなのである。

 本番を翌日に控えた土曜日の昼下がり。8人の選手たちの「長い1日」が始まった。最初は説明会と騎乗馬を決める抽選会が行われた。今回、より安全を期するために、という配慮から、新たに「エアバッグ付きプロテクター」なるものが標準装備となった。また「鞭の使用」は禁止された。

 そして、騎乗馬の能力差をできるだけなくすために、昨年1着のグッピー号と最下位のドリームスター号を除外し、2着〜7着までの6頭に加えて新たに2頭が追加され、8頭が用意された。その他に予備馬も確保して、ここまでは万全の態勢であった。

 枠順は予め決められている。距離は芝コースの直線400m。スタートはカウントダウン方式である。枠順による有利不利はたぶんない。北から南に向かって順に並べられており、1番、2番が北海道で8番が九州となっている。

 緊張感の漂う雰囲気の中、騎乗馬の抽選が行われた。くじ引きにより、まず「くじを引く順番」を決める。それにより決定した順番にしたがって、今度は馬名の記入された紙片を引く「騎乗馬抽選」となる。念の入った公正さで、断じて「騎乗馬が最初から決められている」などということはない。

 抽選の結果、以下のように騎乗馬が決定した。

1.大池悠梨香さん=レモン
2.木村和士君=栗姫(新)
3.石井李佳さん=さくら(新)
4.市川陸君=オオタニハヤテ
5.永井孝典君=コリス
6.名倉賢人君=レインボー
7.出口莉穂さん=ユキノヒビキ
8.吉永彩乃さん=ブッチー

昨年2着となったコリスを引き当てた永井孝典君

昨年2着となったコリスを引き当てた永井孝典君

 栗姫とさくらが今回新たに登場したポニーで、他の6頭は昨年のJBに出走している。因みに2着コリス、3着ユキノヒビキであった。

 どんよりと曇っているものの11月とは思えないくらいの高い気温。8人は馬装を終え、さっそく練習を開始した。

東京競馬場のスタンドをバックに練習

東京競馬場のスタンドをバックに練習

 まずは、乗馬センターの角馬場で入念に乗り込み。短時間で馬の性格や癖を把握しなければならないのだから大変である。

 とっぷりと日が暮れた午後4時40分。最終12レースが終わるのと同時に、本馬場へ足を踏み入れた。翌日の本番に備え、コースを試走するのである。
 夕闇の迫る本馬場を次々に8騎がキャンターで走り抜けてくる。角馬場での練習時、バランスを崩して落馬し、エアバッグが開いてしまった子もいたのだが、このリハーサルではどうにか全馬が無事に走り終えた。

日が暮れてからターフを疾走

日が暮れてからターフを疾走

 翌日の本番を控え、リハーサルでの感想は各人各様であった。

 6番の名倉賢人君は「明日も落ち着いてスタートが切れたら勝てるかも。馬場が広くて気持ちがいい。坂があるので仕掛けどころが難しい」と語り、100点満点の80点と自己採点した。

 7番の出口莉穂さんは「思っていたより速くかった。スタートはちょっと出遅れたかも。馬はとても前向きでやる気がありそう。100点満点で90点です」と言った。

 1番大池悠梨香さんは「緊張したけどレモンはいい子で楽しかった。こういう場所で乗れる機会はまず他にはないので明日はレースを楽しみたいです」と言い100点満点の50点と採点した。

 2番木村和士君は「結構いい馬だと思います。(栗姫は)初競馬なんで本番で気持ち良く走れたらそれで十分です」と語った。

 リハで最も自信を覗かせていたのは5番永井孝典君。「大きな馬場で、気持ちがいいです。練習は100点満点でした。勝てそうな気がします」とコメントした。

 4番市川陸君も「練習はバッチリでした。暗いのは気になりませんでした。意識的に追わずに軽く流した程度です」と余裕を見せた。

 吉永彩乃さんは「馬が思ったよりも速かったです。スタートが遅れたので明日は上手に出したいです。スタートが上手く行けば良い結果が出るかも。100点満点の50点です」と語った。

 この本馬場での試走後、乗馬センターで馬たちの手入れなどを行って前日のスケジュールは終了した。

 次回は本番当日の模様を紹介する予定でいる。

今年の優勝は石井李佳さんとさくら号

今年の優勝は石井李佳さんとさくら号

 なお、すでに周知の通り、翌日の本番を制したのは3番石井李佳さん。さくら号とのコンビで大外を一気に進み、2着の永井孝典君(コリス号)に8馬身もの着差をつけてゴールインした。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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