生産者賞、大幅削減に

2011年12月07日(水) 18:00

 このほどJRAの2012年度事業計画が発表され、低迷する馬券売り上げが一向に回復する兆しのない中、前年比92.5%、総額2兆3294億4000万円の予算総額となった。今年度から実に1880億円もの大幅減である。

 緊縮財政がより一段と顕著になり競走事業費(競馬賞金、事故見舞金、各種手当)もまた今年度から76億4200万円の大幅減額で1146億8200万円となった。

 競走事業費は多岐にわたるが、ほぼすべての項目が削減された。根幹である本賞金は今年度から26億1400万円減額され、652億5900万円。そして、生産関連では、生産者賞(生産牧場賞、繁殖牝馬所有者賞)が37億5700万円と、3億1100万円の削減で、より厳しさを増した感がある。内訳は以下の通りである。

[生産牧場賞]※括弧内は今年度交付金額
1.天皇賞(春・秋)、日本ダービー、宝塚記念、JC、有馬記念
1着100万円(150万円)2着40万円(60万円)、3着25万円(38万円)、4着15万円(23万円)、5着10万円(15万円)

2.その他のGI競走
1着100万円(80万円)、2着40万円(40万円)、3着25万円(20万円)、4着15万円(12万円)、5着10万円(8万円)

3.その他の重賞競走
1着65万円(70万円)、2着26万円(28万円)、3着16万円(18万円)、4着10万円(11万円)、5着7万円(7万円)

4.重賞競走以外の平地特別競走
1着40万円(45万円)、2着16万円(18万円)、3着10万円(11万円)、4着6万円(7万円)、5着4万円(5万円)

5.平地一般競走
1着30万円(30万円)、2着12万円(12万円)、3着8万円(8万円)

 今年度は天皇賞等の6つのGIとその他のGIとでは交付金額にほぼ倍近い開きがあったのだが、来年度は全てのGI競走が同額になる。重賞と特別がそれぞれ1着ベースで5万円ずつ減額され、平地一般競走は今年度の水準のまま据え置きとなった。日高を中心とした中小牧場への影響に配慮したものであろう。なお、障害競走は、重賞を除き生産牧場賞の交付対象外である。

[繁殖牝馬所有者賞]括弧内は今年度交付金額
1.天皇賞(春・秋)、日本ダービー、宝塚記念、JC、有馬記念
1着130万円(200万円)、2着52万円(80万円)、3着33万円(50万円)、4着20万円(30万円)、5着13万円(20万円)

2.その他のG1競走
1着130万円(150万円)、2着52万円(80万円)、3着33万円(50万円)、4着20万円(23万円)、5着13万円(15万円)

3.その他の重賞競走
1着80万円(100万円)、2着32万円(40万円)、3着20万円(25万円)、4着12万円(15万円)、5着8万円(10万円)

4.重賞以外の平地特別競走
1着40万円(45万円)、2着16万円(18万円)、3着10万円(11万円)、4着6万円(7万円)、5着4万円(5万円)

5.平地一般競走
1着30万円(30万円)、2着(12万円)、3着8万円(8万円)

 繁殖牝馬所有者賞もまた、すべてのGI競走が同額となった。そして、重賞競走(GII、IIIなど)と平地特別競走がそれぞれ1着ベースで20万円、5万円の削減である。ただし、ここでも一般競走は減額されずに今年度と同額となった。また、障害競走は重賞を除き、交付対象外とされている。

 聖域とされた本賞金を大幅に削減せざるを得ないところまで収支が悪化している現状を考えれば、生産者賞もまた例外ではないのかも知れない。そして、下級条件の交付水準を維持するには、上を削減するより他なくなる。ローカルの3歳未勝利戦を勝った馬で生産牧場賞と繁殖牝馬所有者賞を合わせて60万円が交付されるのに対し、同じ3歳馬の頂点を決める日本ダービーは、生産牧場賞が100万円、繁殖牝馬所有者賞が130万円の合計230万円という交付金額にとどまる。

聖域とされた本賞金を大幅に削減

 とはいえ、おそらく大半の中小生産者にとっては、GI競走など今や「夢のまた夢」の世界である。勝ち負けどころか、出走に漕ぎつけること自体がとてつもない難事になってきており、その意味では、より現実的な新馬、未勝利、500万といった下級条件の平地競走における交付金額が据え置かれたことにむしろ安堵する気持ちの方が強いのではなかろうか。

 ところで、これら生産者賞は、「現に軽種馬生産のために必要な施設を有し、軽種馬の生産に従事している者」が交付の条件である。近年、日高では生産を廃業、休業する例が増加してきており、厳密に言うと交付の条件を満たさない生産者が増えてきているということである。せっかく生産馬が活躍しても、すでに廃業してしまっているために恩恵に与れない生産者が現にいる。これもまた生産地の厳しい現実である。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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