ルーラーシップの引退が決まった。
有馬記念の大出遅れにより、ルーラーシップは次走の前に発走調教再審査を課されていたという。
しかも、スポーツ紙によると、それは開催日の最終レースの後に、ファンの前で行われる予定だったという。
「あのクラスの馬をファンの前でいじめるのはどうかと」
というのも角居師が引退を支持した理由のひとつだったようだ。
角居師の口から「いじめる」という言葉が出たのは
きっと、ラガーレグルスの件が脳裏をよぎったのだろう。
2歳時に、現・ラジオNIKKEI杯を含めて3勝をあげたレグルスはクラシック候補の1頭だった。
ところが、2番人気で挑んだ共同通信杯で大きな出遅れを、そして3番人気に支持された皐月賞ではゲートが開くとともに、その場で座り込み、ゲートを出なかった。
これによりレグルスには、開催日に観客の前でのゲート再試験が課せられた。
ところが試験当日のこと。
たちの悪い観客の妨害行為のような騒音で、彼は平常心を失い追試に落ち、ダービー出走への希望を断たれた。
結局、これでケチがついたのか、そのまま二度と競馬場でファンの前に姿を現すことはなかった。
静かなところで行われたゲート試験ではOKでも、大勢の観客がいるレースでは再度出遅れるかも知れない。
それでは、再試験を行う意味がない。
おそらく、それが競馬場で追試が行われる理由なのだろう。
ルーラーシップの場合、3戦続けての出遅れ、しかも、有馬の出遅れはかなり酷いものだっただけに、この追試内容は止むを得ないと思う。
しかし、その反面、G1勝ちまでしたこの馬が、見世物にされ、場合によっては心無いファンによって傷つけられるかも知れないのならば、このまま引退させるという選択肢も理解できる。
なんと言っても、これだけの良血なのだから、その血筋を残すことも重要な仕事なのだ。
それにしても、今年はオルフェーヴル、ルーラーシップという強豪が揃って追試を受ける羽目になった。
これらの馬を管理しているのが、今年のJRAで、最も勝ち星をあげた腕利き調教師の池江師と角居師というのだから、
競走馬の管理、育成、調教というのは本当に一筋縄ではいかないのだろう。
どんなに、筋力や心肺機能が優れていても、速く走れるだけでは名馬には成れない。
競馬って本当に難しい。
きっと調教師もファンと同じことを思っていることだろう。