冬季限定、調教見学ツアー

2012年01月18日(水) 18:00 4

 帯広競馬場では毎年この時期になると、日曜日限定の調教見学ツアーが行われている。去る1月15日に、早速そのツアーに参加してきた。今年の北海道は例年よりもずっと寒く、日高もこのところ連日、真冬日(日中の最高気温が0度を下回る)が続いている。

 日高より十勝の方が確実に気温は低いので、帯広もさぞ極寒の朝になっているだろうと思いながら、約束の午前6時半に厩舎エリア入口まで車を乗り入れた。

 まだ日の出前なので空は暗い。三々五々車が乗り入れられてくる。帯広ナンバーが多い。ということは地元の方々が中心なのである。

 ばんえい競馬を運営するオッズパークばんえいマネジメントのMさんとSさんが私たちを迎えてくれた。全員が集合した段階で1人ずつ点呼をとり、簡単にそこで見学上の留意点が伝えられる。すでに調教が始まっており、人馬が行き交う中を練習用障碍のある調教場の奥まで固まって移動しなければならない。

 当然のことながら全員が「完全防備」の装いであった。ただ、気温はこの時点で-10度前後か。思ったよりも寒くない。

極寒の中での撮影

 調教場に足を踏み入れた途端に、橇を曳きながら調教する大型馬の群れが視界に飛び込んできた。地面に橇が擦れるキュルキュルという音や馬の嘶き、「そらっ」などという人間の声も聞こえてくる。見学者はほとんど全員がカメラを手にしており、まだ暗いうちからしきりにシャッター音が聞こえてきた。

 気がつくと東の空が徐々に赤く染まってきた。この時期の帯広の日の出は6時50分すぎだという。この夜明け寸前から日の出頃がもっとも撮影に適した時間帯で、誰もが夢中で撮影している。見たところ、ばんえいファンというよりは、地元の写真愛好家の方が多いようだ。

朝焼けが美しい

 -10度でも、じっと立っていると指先がしびれたように冷たくなってくる。また足もとからも冷気が立ち上る。やはり寒い。

 やがて太陽が顔を出してきた。晴れていればこうして朝日を背景に写真を撮ることができるのだが、もちろん晴れた日ばかりとは限らない。曇ったり、雪が降ったりすることだってある。その代わり、曇りや雪の朝は気温がそれほど下がらないのでその分だけ楽だが、やはり、ここでの調教写真は晴れている日の方がずっと魅力的だ。

 ツアーは1日あたり10名限定となっている。それに案内役が2人つく。なぜ10人なのか、また2人も案内役が必要なのか、と最初はやや疑問に感じたのだが、いざ見学が始まるとその理由が分かってきた。

 写真愛好家は往々にしてファインダー越しに被写体を追ううちに、つい周囲の状況が目に入らなくなる傾向が強い。この時にも、本来指定されているエリアからはみ出して、後方から近づく人馬の邪魔をしてしまうような場面が何度かあった。その都度「もっと内側に入って下さい」と案内役から注意を受けるツアー客がいた。

 今回はそれでも比較的従順なツアー客ばかりだったが、中には「もっと自由に歩かせろ」などと主張するような人もいるのだろう。たとえ10人とはいえ、全員を掌握して調教の妨げにならないようにするためには、案内役が2人いたほうがいいのである。

 なお、このツアーは料金が2000円だ。競馬場内プレミアムラウンジ利用券付きか、1000円分の馬券購入券付きのいずれかを選択し申し込むことになる。

 とはいえ、人気はかなり高くすでに2月5日までは「満杯」になっており、2月12日と19日も残り僅かという。見学ツアーは3月25日まで実施予定である。冬の帯広は確かに北海道の中でも屈指の寒さだが、この調教ツアーは必見だ。機会あらばぜひ一度参加されてはいかが?

◆問い合わせ
帯広競馬場(お客様サービス部)
TEL:0155-34-0825
電話で申し込み可能(水・木を除く9時30分~午後6時15分)。

【お知らせ】
「生産地だより」の次回更新は1/26(木)18時になります。何卒ご了承の程よろしくお願い致します。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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