自分をつくってくれたのは

2012年01月26日(木) 12:00

 自分をつくってくれたのは、先人たちが築き蓄えてきた文化ではなかったかと気づかされたのだ。唐突になんのことと思われるだろうが、JRA賞授賞式の会場にいて、壇上で表彰される調教師さんの顔ぶれを見ていてのことだ。

 最多勝利の角居勝彦師、最高勝率の堀宣行師、最多賞金獲得の池江泰寿師、いずれも40代の方々。世代交代はどの世界にもつきものだし、それでないと発展はないとは分かっていても、今年ほどそんな思いを強くしたことはなかった。

 親の影響を強く受けた方、たまたまアルバイトで働いた牧場で馬に触れあってこの世界に入った方など、そのキッカケは様々に見えるが、実は、いずれも競馬に強い関心を持ったからであり、大きく見れば、競馬という文化に身を投じる魅力を感じたからだろう。

 そして、その文化は、一朝一夕にして築かれたものではなく、当然、そこには先人たちの存在がある。故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知るーではないが、その先人たちの遺した血と汗で築き蓄えられたものが、後に続いた世代に無関係ということは絶対にあり得ない。

 ならば、いまの自分もそうではないか。若い時分は特に自分が強いから、すべて独創だけが価値があるもので、ただ学んで得たものじゃ駄目だと思いこんでいた。ところがいまにして、自分が過去から学んだものが、いまの自分の力になっていると身にしみて思っているのだ。

 生まれてすぐに、誰しもが世の中の影響を受け、それは死ぬまで続いていく。自分の独創だけでは、とてもここまで生きてきたとは言えないのだ。

 ゲーテは、「一体エネルギーと力と意志以外に自分のものがあるか。もし私が偉大な先駆者や同時代の人に負うた点をひとつひとつあげることができたら、残る所はきわめて僅かだろう」と悟ったとものに書かれてあったが、自分の真実を知る思いがする。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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