ハリケーンフライ、チャンピオンハードル連覇へ

2012年02月01日(水) 12:00

欧州障害開催のハイライト「チェルトナム・フェスティヴァル開催」まであと6週間余りとなった。まだニューバリーのベットフェアハードル(2月11日)やレパーズタウンのアイリッシュヘネシー(2月12日)をはじめ、いくつかの前哨戦を残しているが、チャンピンオンハードルもゴールドCもほぼ勢力分布が固まりつつある。

 まず今週は、3月13日のG1チャンピオンハードル(16F110y、障害数8)の有力馬を御紹介しよう。

 このレースに関して言えば、ようやく収まるべき馬が収まるべきポジションについたのが、1月29日だった。この日、レパーズタウン競馬場で行われたG1アイリッシュ・チャンピオンハードル(芝16F)に、昨年のチェルトナム・チャンピオンハードル勝ち馬ハリケーンフライ(セン8、父モンジュー)が出走。ほとんど追ったところのない競馬で後続に6馬身半差をつける快走を見せ、連覇へ向けて一点の曇りもない状態であることを実証したのである。

 チェルトナムのチャンピオンハードルに加えて、G1パンチェスタウン・チャンピオンハードル、G1フェスティヴァルハードル、G1アイリッシュ・チャンピオンハードルなども制し、ハードル界の主要なタイトルを総ナメにしたのが、昨シーズンのハリケーンフライだ。ジャンプ・クラシフィケーションでもレイティング173を獲得し、1998年から2000年までチャルトナム・チャンピオンハードル3連覇を成し遂げた伝説の障害馬イズタブラク以降の最強ハードラーとの評価を確立した。

 今季も現役に残った同馬には、当然のことながら大きな期待が寄せられていたのだが、一向に競馬場に姿を現さず、ファンをやきもきさせることになった。当初は、11月19日にレパーズタウンで行われたG1モーギアナハードル(芝16F)で復帰の予定が、調整遅れから態勢整わずという理由で回避。その後、クリスマスまでには復帰との声が陣営から出たが、それも叶わず、ようやく12月29日にレパーズタウンで行われたG1フェスティヴァルハードル(芝16F)にエントリーしたものの、最終追い切りの動きが物足りないというウィリー・ムーリンズ調教師の判断で、ここも直前で回避。とうとう年を越え、前走からすると8か月半振りの実戦となったのが、1月29日のアイリッシュ・チャンピオンハードルだったのだ。

 ファンはもとより、陣営もいささかなりとも仕上がりに不安を抱いて迎えたレースだったが、あにはからんや、ムーリンズ調教師の言葉を借りれば「ひょっとすると、キャリアベストのパフォーマンスだったかも」という楽勝で、2010年4月から継続しているG1連勝記録を7に伸ばすことになった。

 これを受け、もともとこの馬をチェルトナム・チャンピオンハードルへ向けた前売り1番人気に推していたブックメーカー各社は、一斉にオッズをカット。ラドブロークスの1.67倍を筆頭に、軒並み2倍を切る「オッズオン」の大本命として遇することになった。

 各社が7倍から8倍のオッズで2番人気に掲げているのが、上がり馬のグランドゥウェ(セン5、父アルナミクス)だ。フランス産馬で、2010/11年シーズンから英国のニッキー・ヘンダーソン厩舎に移籍。そのシーズン末にパンチェスタウン・フェスティバルのG14歳ハードル(芝16F)を制して初のメジャータイトルを獲得した。

 初戦のG2エリートハードル(芝16F)で落馬と今季のスタートは芳しいものではなかったが、続くヘイドックの一般戦(芝16F)で勝ち星を挙げると、12月10日にチェルトナムで行われたG2インターナショナルハードル(芝17F)を4馬身差で快勝。この後は、2月18日にウィンカントンで行われるG2キングウェルハードル(芝16F)を使われる予定になっており、そこでの内容次第では、ハリケーンフライの1強状態を覆すところまでは行かずとも、2番手グループから1歩も2歩も抜け出す可能性はある。

 各社8倍から9倍のオッズで3番人気になっているのが、ザルカンダー(セン5、父アザムール)だ。なんとこの馬、凱旋門賞などを制して2008年の欧州チャンピオンに輝いた、名牝ザルカヴァの半弟という、とんでもない血統背景を持つ。姉と同じアラン・ド・ロワイヤルデュプレ厩舎の所属馬としてデビューするも、平地では目が出ず、所有者が変わって昨年2月にポ−ル・ニコルス厩舎からハードラーとして再デビュー。いきなりG2アドニス・ジュヴェナイルハードル(芝16F)を制して重賞を制覇。続いてチャルトナムのG1トライアンフハードル(芝17F)に挑んでここも白星で通過。続いてエイントリーのG1ジュヴェナイルハードル(芝16F110y)も制し、3連勝で昨シーズンを終えている。

 今季ここまでまだ未出走だが、遅い始動は当初の予定通りで、シーズン初戦は2月11日にニューバリーで行われるG3ベットフェアハードル(芝16F110y)が予定されている。

 ラドブロークスが6.5倍で3番人気、他社が9倍から11倍で4番手に評価しているのが、実績馬のビノキュラー(セン8、父エンリーク)だ。

 この馬もフランス産馬で、エリー・ルルーシュ厩舎所属として平地でデビューし、準重賞2着までの成績を挙げた後、グランドゥウェと同じ英国のニッキー・ヘンダーソン厩舎に転厩してハードルデビュー。2008年のエイントリーでG14歳ノーヴィスハードル(芝16F110y)を制して初タイトルを獲得。2010年春にはG1チェルトナム・チャンピオンハードルを、トニー・マッコイ騎乗で制して、ハードル界の頂点に立った。

 ハードル転向後、18戦して落馬が一度もなく、10勝、2着2回、3着4回と、抜群の安定感を誇るビノキュラー。12月26日にケンプトンで行われたG1クリスマスハードル(芝16F)を、前年に続いて連覇。今週末の2月4日、サンダウンで行われるLRコンテンダーズハードル(芝16F110y)を叩かれて、本番に向かう予定となっている。

 ブックメーカーがひとケタのオッズを掲げているのは、ここまで。

 ハリケーンフライが1強で、グランドゥウェ、ザルカンダー、ビノキュラーの3頭が2番手クループを形成というのが、チェルトナム・チャンピオンハードルへ向けた目下の情勢と言えそうだ。

 来週は、3月16日に行なわれるスティープルチェイスの最高峰、G1チェルトナム・ゴールドC(芝26F110y)の有力馬を御紹介したい。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

新着コラム

コラムを探す