見どころ満載のゴールドC

2012年02月08日(水) 12:00

 障害界の祭典「チェルトナムフェスティヴァル開催」まで、あと1か月余りとなり、各競走の勢力分布がかたまりつつある。

先週のチャンピオンハードルに続いて、今週は、スティープルチェイス界の最高峰と言われる3月16日のG1チェルトナムゴールドC(26F110y、障害数22)の有力馬を御紹介しよう。

ブックメーカー各社が3倍から3.25倍のオッズで1番人気に推しているのが、前年に次ぐこのレース連覇を狙うロングラン(セン7、父カドゥーダル)だ。フランス産馬で、08年5月に母国でハードラーとしてデビュー。G1カンバセル賞などを制した後、デビューから1年後の09年5月にスティープルチェイスに転向。ここでもG1モーリスギヨワ賞などを制した後、09年の年末に英国に移籍し、ニッキー・ヘンダーソン厩舎の所属となった。

 10年のチェルトナム開催はG1RSAチェイス(24F110y)に出て3着だった同馬。11年1月に、雪で3週間順延となったG1キングジョージ6世チェイス(24F)を制して初のメジャータイトルを獲得。その後11年のチェルトナム開催ではG1ゴールドCに挑み、デンマン、コートスターという2大スターを退けて優勝。スティープルチェイス界の頂点に立った。

 今季は、初戦となった11月19日のG1ベットフェアチェイス(24F)で、引退の崖っ淵に立たされていたコートスターに7馬身差を付けられる2着に敗退。前走12月26日のG1キングジョージ6世チェイスでも、再びコートスターの後塵を拝しての2着と、連敗スタートとなったロングラン。今週土曜日(2月11日)にニューバリーで行われるG2デンマンチェイス(24F)で、本番前最後の足慣らしを行なう予定となっている。万一何かに脚元をすくわれて3連敗を喫することになると、ゴールドCに向けて黄色信号が灯ることになるが、さすがにここは無事に通過すると見られており、盤石の態勢を整えて本番を迎えることになるはずだ。

 ここまで20戦して落馬は一度も無く、12勝、2着5回、3着2回と、複勝率100%。抜群の安定性を誇る馬だけに、ファンが馬券の軸にしたくなるのはこの馬ということになりそうだ。

 各社4.5倍から5倍のオッズで2番人気に評価しているのが、コートスター(セン12、父ヴィレッジスター)である。既に伝説の存在となっているこの馬について、多くを語る必要はなかろう。昨シーズンは、キングジョージ6世チェイス、チェルトナムGCと続けて3着に敗退後、パンチェスタウンのG1ギネスGCチェイスで生涯初の途中棄権を記録。限界説が流れ、マスコミ紙上で引退勧告を受けながら、現役に留まった今季、G1ベットフェアチェイス、G1キングジョージ6世チェイスと連勝。奇跡の復活劇を演じ、競馬ファンの興奮のるつぼに巻き込んだ千両役者である。

 07年、09年に続く、自身3度目のゴールドC制覇が成った暁には、1969年のウィズアミス以来実に43年振りとなる、12歳馬による優勝が達成されることになる。

 各社8倍から11倍のオッズで3番人気に支持しているのが、上がり馬のグランクルー(セン7、ドムアルコ)だ。フランス産馬で、09年10月に祖国でハードラーとしてデビュー。2シーズン目の11年1月にチェルトナムのG2クリーヴハードル(24F)を制して重賞初制覇。続いて挑んだチェルトナムフェスティヴァルのG1ワールドハードル(24F)は、その路線の絶対王者ビッグバックスの2着だった。

 今シーズンからスティープルチェイスに転向した同馬。初戦となったチェルトナムのノーヴィスチェイス(20F110y)を10馬身差で制すると、続くニューバリーのG2GPGノーヴィスチェイス(24F)を制してスティープルチェイスの重賞初制覇。続いて12月26日のボクシングデーにケンプトンで行われたG1フェルトハムノーヴィスチェイス(24F)も快勝して、G1初制覇を果たした。

 今週土曜日にニューバリーで行われるノーヴィスチェイス(24F)にエントリーしているグランクルーだが、実際に走るかどうかは現段階では未定だ。チェルトナムフェスティヴァルでは、3月14日に行なわれるG1RSAチェイス(24F110y)か16日のゴールドCのいずれかに向かう予定だが、どちらを使うかの決定はギリギリまで持ち越されると見られている。

 各社11倍から15倍のオッズで4番手評価なのが、シンクロナイズド(セン9、父サドラーズウェルズ)である。08年2月にハードラーとしてデビューし、6戦を消化した後、09年11月に初めてスティープルチェイスを経験。その後、ハードルとスティープルチェイスを行ったり来たりしながら競馬をしているが、明らかにスティープルチェイスの方に適性があり、ハードルでチューンナップを図った後、目標としているスティープルチェイスのレースを狙うスタイルをとっている。昨シーズンも、ハードルで連敗した後、チェプストウのG3コーラルウェルシュナショナル(29F110y)を制して重賞初制覇。今季もまたハードルで2連敗の後、12月28日にレパーズタウンで行われたG1レクサスチェイス(24F)を8.1/2馬身差で快勝してG1初制覇を果たした。

 今週日曜日(12日)にレパーズタウンで行われるG1アイリッシュヘネシーGC(24F)に登録があり、今週の追い切りの動きが良ければ出走する予定だが、現段階ではチェルトナムGCへ直行の可能性も残されている。 

 コートスターによる偉業達成がなるかどうかを筆頭に、見どころ満載のゴールドCだが、馬券的には意外に難かしい競馬になりそうである。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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